第18話:疲れた心に癒しを(前編)
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勧したりと、結構気を張ることが多かったからな。俺、疲れてるのか?)
瞼を開くと、さっきまで普通に見えた目の前の光景がぼやけて見えた。目をぎゅっと瞑って顔を横に振り、再び目を開くと元通り問題なく見える。息を大きく吸い、ゆっくり吐くと、頭のボヤボヤした感じが消えてクリアになり、足腰に力が戻ってくる。
「……大丈夫?」
俺の後ろから気遣わしげな声が聞こえてきた。誰だろうと、俺は後ろを振り返ると、心配そうに俺を見る知子の姿があった。少し駆け足で、俺の方に近づいてくる。
「知子か。どうした?」
俺は、心配させまいと声の調子を整えて、いつも通り軽く知子に声を掛けた。だが、知子はそんな俺の様子を見て、歩みを止めて表情をさらに険しくした。そして、再び歩みを進めて、いや先程よりも速度と迫力を増して俺に詰め寄ってきた。
「どうしたのはたっくんよ! さっき、壁に倒れこんでいたでしょう?」
「た、ただの立ちくらみだ。気にするほどの事でもねえよ」
「気にするわよ。最近、たっくんの身体が調子悪いの、知ってるんだから」
「本当だよ。それよりも、今日ビラ配りだろ?」
「話を逸らそうとしないの! バツが悪くなったら話を逸らす癖なんて分かってるんだから!」
俺は知子の手元に持っていたビラを指差して話を逸らそうとするが、長い付き合いの知子には既にバレバレであった。俺は知子の迫力に押され、先ほど俺がもたれていた壁に今度は背中からもたれた。
(す、すごい剣幕だ。いや、それはまだいいとして……か、顔が近い!)
俺の顔と知子の顔の間は、おそらく15cmもないくらいの距離だった。こんなところを誰かに見られたら誤解をされて当然だろう。
それにこの近さは、外から見られて外面がマズイだけではない。俺の内面にとっても色々問題が起こるのだ。
知子は、世間一般に見ても美少女だ。少なくとも、俺はそう思っているし、輝日南中にも憧れている奴もいると噂で聞いたことがある。そんな知子の顔が、自分の目で見える範囲いっぱいに広がるのだ。練習から上がったばかりのまだ少し濡れた髪とおでこに、少し潤んだ瞳。ほんのり赤みがかった頬にきゅっと結んだつややかな唇、それらを含めた全てが俺の頭をかき乱していった。顔、特に耳が熱を持っているのがしっかり分かる。
きっと、俺は顔を真っ赤にしていることだろう。心拍数もきっとレース後ぐらいのレートの速さになっている。昔は、まだまだ子どもと意識することも無かったのに。
「……やっぱり顔が赤い。熱があるんじゃないの?」
「ふぇ?」
俺の赤くなった顔をじいっと見つめてそのような事を言うと、知子は俺の額に左手を当てて熱がないかどうかを確か
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