第一章
[2]次話
同志
上海の街で二人の若い男達が話していた、二人共あっさりとした結構洒落た服装に髪型だ、背はどちらも一七二位だ。
アジア系の顔である、それを見れば二人共中国人であることがわかる。ちょっと見ただけでは友人同士に見えるが。
よく見れば距離は近い、友人同士にしては。
その二人のうちの右の若者がだ、こう言って来た。
「ちょっといいか?」
「どうしたんだ?」
左の若者が彼に答えた。
「一体」
「ああ、今日の新聞読んだか?」
「環球報か?あそこの新聞はな」
左の若者、王守成はその細い目を鋭くさせて言った。
「読まない方がいいぜ」
「質が悪いからだな」
右の若者、李明生はその厚い唇で返した。
「それでだよな」
「過激な論調で煽るだけだからな」
「そうした新聞だな、確かに」
「今時あんなの憤青しか読んでないだろ」
「つまり馬鹿しかな」
「ああ、だからな」
それで、とだ。王は李に話すのだった。
「環球時報はな」
「読むべきじゃないか」
「そうだよ、読んでるのか?」
「いや、あれじゃないさ」
環球時報でないことはだ、李も答える。
「あの新聞じゃな」
「そうか」
「別の新聞だよ、そこにこう書いてあったんだよ」
「俺達のことはか」
「どうしたものかってな」
「同性愛は駄目か」
王は遠い目になって言った、
「そう書いてあったんだな」
「またな」
「本当にまただな」
「ああ、まただよ」
李は王とは正反対に少し苦笑いだった、その顔での言葉だ。
「またそう書いてあったんだよ」
「やれやれだな」
「共産党は同性愛嫌いなんだな」
「だろうな、不健全とか言ってな」
「毛沢東からか?」
「あの人結構美少年好きだって噂もあるぜ」
こうした話が実際にあるらしい、毛沢東といえば大の女好きだったことで有名だが。英雄色を好むということか。
「実は、ってな」
「女だけじゃなくてか」
「まあ同性愛なんてな」
「うちの国じゃな」
つまり中国ではだ。
「昔からあるしな」
「それこそ戦国策とかの頃からな」
それだけ古いというのだ。
「漢の武帝だってそうだったらしいし」
「本当に昔からあるよな」
実はそうなのだ、中国の同性愛の歴史は古いのだ。
「今だってな」
「俺達みたいにな」
自分達から話す、このことを。
「男同士でもな」
「ベッドの中で一緒になるとかな」
「そうした場所もあるし」
「密かに、にしても」
「けれどか」
「ああ、党の方はな」
共産党は、というのだ。言うまでもなく中国では体制だ。
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