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鉄と血
第二章
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 そうした日々を過ごしている中でだ、ウィーンをある話が届いた。その話はというと。
「プロイセンで新首相就任だ」
「ビスマルクがなったらしいぞ」
「あいつはかなりの強硬派だ」
「プロイセンが一層勇ましくなるぞ」
 市民達はやや眉を顰めさせて話していた、そして彼等はそのビスマルクについても言うのだった。
「何でも鉄と血が、らしいな」
「ああ、ドイツを作るって演説したらしいな」
「鉄と血なあ」
「物騒なことを言うな」
 市井の者達はこう話した、そしてだった。
 ロンダはその話を聞いてだ、家でエンヤに言った。
「わかったわ、お祖母ちゃんの夢の意味は」
「うむ、わしもじゃ」
 夕食を食べつつ話すのだった。
「わかったわ」
「そうね、血は戦争よ」
「そして血はな」
「産業ね、そしてその二つがね」
「ドイツを統一するのか」
「そういうことだったのね、この場合鉄と血は一つね」
 ロンダは考える顔でエンタに述べた。
「戦争も最近はね」
「銃に大砲にとな」
「色々使うからのう」
「鉄を使ってね」
「兵隊さん達の血を流して」
「鉄を兵器に使ってね」
 そうして戦争をするというのだ。
「あの人は戦争でドイツを統一する気なのよ」
「そしてドイツを統一するか」
「お祖母ちゃんの夢はそういうことだったのね」
 ロンダは夕食のシチューを口にしつつ述べた。
「要するに」
「そうだったのかのう」
「どうやらね、戦争が起こるとなると」
「いざという時は逃げる用意をするか」
「ええ、戦争に巻き込まれたら元も子もないわ」
 占いの商売自体もというのだ。
「だからね」
「逃げる用意はしておくか」
「そうしておきましょう」
 こうした話をしてだった、二人は未来を読んでいた、そしてだった。
 ある日またエンヤは夢を見た、そしてすぐに朝に朝食の場でロンダにその夢のことも話したのだった。その夢とは。
「鉄と血が黄金に覆われた広場に迫る」
「黄金ね」
「この黄金はわかるな」
「わかってきたわ」
 先のエンヤの夢のことからだ、ロンダは察して答えた。
「黄金っていったらね」
「ハプルブルク家じゃな」
「ハプルブルク家の色は金よ」
 即ちそれが黄金だというのだ、このことは二人共ウィーン、そのハプスブルク家の都であるウィーンにいるからわかることだった、
「その金に迫ってきて」
「そして黄金に覆われた広場に迫って来ておった」
「それからどうなったの?」
「黄金とぶつかったが飲みこなかった」
「黄金は負けたの?」
「少し押された、しかしそれはすぐに終わったのじゃ」
「黄金が巻き返したのかしら」
 ロンダは何故そうなったのかをだ、祖母に問うた。
「それでかしら」
「いや、鉄と血が動きを止めたのじゃ」

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