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王道を走れば:幻想にて
第三章、終幕:騎士騎士叙任式
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 二頭の馬が疾駆している。達磨のように逞しく鍛えられた馬体に鎖帷子のような鎧を纏い、その顔を勇ましき二本の鉄の角で飾っている。馬も宛ら、それに乗る男達も正に優劣つけ難い程に勇猛な姿である。全身をフルプレートの厚い鉄色の鋼鉄鎧に隠し、左胸と左肩には更に楯が備えられており、中心に赤い斑点が塗られている。頭には、眉間を中心に十字架をあしらった大兜を被っていた。後頭部には鮮やかな鳥の羽が飾られており、片方が血の赤に、もう片方が海の蒼に彩られていた。
 両者の片手には、凶悪な一本のランスがそれぞれ握られていた。持ち手を取り囲むような鍔から、円錐型の3メートル相当の穂先が伸びていた。穂先は三叉に別れ、刃が潰されている。持ち手を守る鍔と穂先以外は木で造られており、鍔から穂先にかけては羽の色に対応するように、それぞれ赤と蒼の文様がバネのように延々と描かれていた。
 両者の兜の細長い目元からは、ぎらぎらと凄まれた眼が覗かれている。互いの下へ真っ直ぐに駆けていく二つの騎馬は重々しい駆け音を鳴らしつつ、すれ違うように交差する。瞬間、両者の槍が繰り出され、穂先を相手の胸へと打ち込もうとした。

「グオッッ・・・!!」

 赤き槍が半ばからばきっと折れると同時に、蒼い羽を飾った男が悲鳴を漏らし、破損のない槍を落としながら後ろのめりに落馬していく。途端に、周囲から歓声と雷のような拍手が木霊した。
 場所は王都内縁部、北側に広がる一大集兵場。常は訓練のために開かれるこの広大な空間において、高尚な催しが行われていた。即ち騎士闘技会、またの名を馬上槍試合。マイン王国においてこの大会とは即ち、勇壮たる騎士達の名誉を讃え、或いは新任の騎士達を迎え入れる崇高な儀式であった。昨日の騒動にも関わらずこの大会と騎士叙任式が開かれるのは、王国の威信を損なわせないためであり、どんな事態となっても中止や延期をしてこなかった昔からの伝統を続けたいがためであった。今日においては新任騎士を歓迎する意味合いで開催されており、若き騎士の雄姿を見たいがために女子達が集い、それを利用せんと貴族達が群れ、それを歓迎し賞賛せんと今昔の同僚達がこぞって集結していた。
 今、半ばから折れた槍を携えながら元の場所へと戻ってきた騎士もまた、新たなる騎士の一人であった。従者達が手伝いながら身の丈の高い彼を降ろし、さっぱりとした息を漏らしながら騎士は兜を取った。ざっくばらんな赤髪と、興奮で紅潮した精悍な美顔が覗かれている。

「よくやった、ジョゼっ!!見事な一突きであった!!」
「有難う御座いますっ!」
 
 新任の騎士、ジョゼは壮年の騎士補佐に快活な声で答えた。補佐は感慨に耽るようにジョゼを見下ろす。

「一兵卒であったお前も、今や立派な騎士か・・・。人は成長するものだな」
「これも全て、ハ
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