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王道を走れば:幻想にて
第三章、終幕:騎士騎士叙任式
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ボック様のお陰ですよ。あの方と一緒に遠征に出ていなかったら、俺はずっと、ただの兵士として終わっていましたよ」
「その、語尾に『よ』とつける口調は止めろ。人に要らぬ誤解と不快感を生ませる」
「いやぁ、そりゃ無理な話ですって。俺からこいつを取り上げるのと同じくらい無理ですよ」

 ジョゼはそういって顔をとんとんと指差した。そしてうら若き蕾達の視線に気付くと、振り返って颯爽と手を掲げた。遠目からでも分かる、女子達が頬をさっと赤みで染めてそれを掌で押さえる姿が。自慢げに笑みを浮かべるジョゼに向かって、補佐は呆れるように肩を竦めた。
 ジョゼはというと蕾の中に視線を巡らし、そして貴族の中でも高位の者達が集う方へと目を向けて、静かに言った。

「まだ王女様はいらっしゃらないんですか?」
「見る限り、そのようだ」
「残念。俺の次の試合までに来てくれれば嬉しいんですけど・・・」
「・・・いや、どうやらその心配は無さそうだ」

 おおっ、という歓声が一方から上がった。コーデリア王女殿下が、遅まきながら参上したようである。彼女の美しき空のような髪が見えた途端、ジョゼは胸に手を当てて凛々しき敬礼をした。而して面を上げたその口からは、優男のような軽々しい言葉が漏れた。

「ヒューっ、相変わらずお綺麗ですよ、王女様・・・季節を告げる妖精のようだ」
「同感だな・・・食膳を飾るアロエの葉のようだ」
「その例えには知性が感じられませんし、高貴な女性も口説けませんよぉ?」
「・・・お前が騎士でなければぶん殴っていた所だよ」
「はははははっ、騎士になってよかったぁ」
「このっ・・・!」

 いきり立った補佐がジョゼの金的に前蹴りを放つが、鋼鉄の股間プロテクターに爪先が当たり、寧ろ己が悶絶する結果となってしまった。声にならぬ悲鳴を他所に、主審の高らかな声が木霊した。

『騎士たるや、その武術は巧を極めるものであるべし!騎士たるや、その勇猛は武技で以って示すべし!新たなる王国の騎士達よ!!主神の御加護ぞある名誉の騎士達よ!!国王陛下、王女殿下の御覧の下、その果敢たる武と心を示せっ!!』

 トゥベクタの高調子が空を裂いた。闘技場に一層の期待が立ち込め、興奮の空気がジョゼの肌を奮わせた。従者達の手伝いを受けながら、ジョゼは息を落ち着かせた身体をさっと馬に乗せた。爪先の痛みを堪えながら補佐が怒鳴る。

「最後の締めだっ!!相手も同じ新任騎士だ、かなり気張っているぜ!!だがお前なら絶対に勝てる!!いっちょ決めて来い!!
「了解ですよ!!このジョゼ=ディ=マレチェクっ、勝利の栄華を貴方に捧げましょう!!」
「はっ、その言葉は女のためにとっときな!!」
「えぇ!!今夜にでも囁いてみますよ!!!」

 ジョゼは快活な笑みを兜で隠し、その視線を相手
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