第二章
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「御前のボールは重いけれど球筋さえ分かればな」
「打てるっていうんだな」
「球筋ってのは分かるんだよ」
左手で己の目を指差してだ、恒夫は笑顔で言う。
「この目でな」
「それで分かればか」
「打てるんだよ」
「それで俺のボールもか」
「シリーズでも打ってやるな」
「打たれてたまるか」
負けん気を見せて言い返す秀巳だった。
「兄貴にだけは打たれるか」
「俺は誰のボールでも打てるぜ」
「俺は誰にも打たれないからな」
食事をしつつ言い合う兄弟だった、その二人にだ。
二人の両親は笑ってだ、こんなことを言うのだった。
「じゃあ福岡での応援の時はラーメンだな」
「大阪だとお好み焼きね」
「観光も楽しんでな」
「野球も観てね」
「そうしてだな」
「楽しみましょう」
こんな調子だった。
「それじゃあな」
「二人も頑張ってね」
「是非シリーズに出てな」
「全力でぶつかるのよ」
両親は二人とは全く個性が違いのどかだった、しかし二人は卒業し正式に入団する前からこんな調子だった、そして。
恒夫は入団して早々キャンプで大きなホームランと見事な守備を見せた。それで監督やコーチ達が言うのだった。
「丁渡サードが抜けていたところだ」
「ええ、好都合ですね」
「それを考えて獲得しましたし」
チーム戦略もありドラフトで指名したというのだ。
「これならですね」
「開幕からサード任せられますね」
「現役時代の田中幸雄さんみたいで」
「あの人は最初はショートでしたが」
「じゃあ一年目からですね」
「スタメンですね」
「キャンプでもオープン戦でも間違いなしだ」
実際に観てだ、監督も言うのだった。
「だからな」
「はい、それでは」
「開幕から使いましょう」
こうして恒夫は開幕からサードを任されることになった、そして秀巳は秀巳でだ。キャンプの時からだった。
正確な今度ロールで速球を投げてみせた、しかもスタミナもあり。
「先発いけますね」
「これなら問題ないですね」
「度胸もありますし」
「先発を任せられますね」
「ああ、いいな」
このチームの監督も言うのだった。
「あいつならな」
「ええ、スライダーとシュートもいいです」
「稲尾さんみたいにいけますよ」
「あれなら」
「ペナントでも最初から投げさせる」
先発で、とだ。監督も言い切った。
「それならな」
「はい、それじゃあ」
「それで」
こうしてだった、秀巳もだった。
一年目から使われることになった、そして実際に。
恒夫も秀巳もそれぞれ活躍した、恒夫はここぞという場面で長打を打ち見事な守備を見せてチームの勝利に貢献し。
秀巳は速球と変化球で三振の山を築きピンチにおいて踏ん張り勝利をもぎ取っていった。そ
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