Interview12 オトギノヒブン −Historia of “Tales”−
「残された希望を破壊しないでくれ」
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儀式。
「重いわね……さすがに全員分を抱え込むのは無理そう。――箱舟守護者よ。生体データ量が少ない順にサルベージしていいかしら」
『……それでトールの人々が一人でも多く救われるならば』
「賢明な譲歩に感謝するわ。続けましょう」
その後、イリスは、触手をキューブに刺してはデータを吸い上げ、また別のキューブに触手を刺すという行為をくり返した。
「どうして……」
「? エリーゼ、どしたの?」
「あんなに不気味な見た目なのに、人助けして……反則です」
エリーゼの目尻にはうっすらと水滴が滲んでいた。エリーゼ自身も気づいて目尻を拭うが、我慢しているのか唇が震えている。
何となくエリーゼの気持ちが読めた。
ルドガーはせめて、エリーゼの肩に手を置いた。
「俺も、最初はイリスの精霊態、えぐいって思ったよ。いや、今でもたまに思う。イリスが強くなって、手がつけらんないくらい蝕の精霊らしくなってくたびに、思うよ。『バケモノみたいだ』って」
「っ!! ルドガー…も?」
「イリスはそれでいいって言ってくれた。気持ち悪いって感じるのは、身を守る本能だから、むしろそう思わないと駄目だって。そう感じないなら生存本能が壊れてるって。だからさ、エリーゼが今までエルを遠ざけようと思って色々してくれたのだって、正しいことだ」
「知って…たん、ですか」
結構露骨だったから、とは、ルドガーは言わないでおいた。
「俺のイリスへの気持ちは、俺の中のクルスニクの血から来るものだ。エリーゼが無理だと思うなら、イリスを好きでいる必要はない。好き嫌いの気持ちなんて、誰にも左右できないんだから」
大食い大会などのチャレンジャーには、胃袋を広げるため逆にトライ前に食べるという方法が伝わっている。イリス自身の精霊喰らいとそれは似ていた。一度目は微精霊でも吐いてしまうほどだったが、二度、三度と重ねる内に強い大精霊をも平らげることができるようになった。現代ではセルシウスの「食事」から特にそれが顕著だ。
トール文明の民のデータを吸収するのも、イリスにとっては自己容量を増やすための絶好のチャンスに他ならない。
もっとも電気信号などイリスには栄養にもならないので、いずれデータを吐き出してジュードあたりにくれてやる腹積もりである。彼なら立場上、有効活用できるだろう。
(……ぐらいの収穫しか予想しなかったのだけど。思った以上にイイモノを見つけられたわね。10万年以上前の文明、その成立と発展と存続。やっぱりイリスの考えは間違ってなかった)
知らず口が弧を描く。
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