一話
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「……美鈴、あなた最近負け慣れてないかしら?」
葉が散り切った木が真南に上った日に照らされ、短い影を作る頃。
窓のない真紅の館、紅魔館の主であるレミリア・スカーレットは紅茶を口に含み、紅魔館の門番として働いている紅美鈴を呼び出して告げた。
「……へ?」
美鈴は一瞬、その意味がわからなかった。
言葉の意味ではない。わざわざ呼び出してそんなことを言った理由である。
目の前の主は続ける。
「紅霧異変では、巫女はおろか魔法使いにまで突破され、そうでなくとも普段は居眠りをしてることもあるそうね。挙げ句の果てに、妖精メイドからもダメーリンとまで言われる始末」
「え!?私そんなこと言われてるんですか!?」
「いい?外の世界の戦争で例えると、あなたは、キーパーのつもりで待ってるかもしれないけど、ここは幻想郷よ?空を飛ぶ者もいるわ」
「なんでサッカーなんですか?」
「昔のように門の一点だけを護ればいいわけじゃないの。センターバックのようにそこらを移動しなさい」
「なんでサッカーなんですか?」
「そしてゆくゆくはボランチのように攻撃も守備と並立して出来るようにしてくれないと……」
「なんでサッカーなんですか?」
「うるさいわね!今私が話してるの!」
「えっと……ひとつ言いますけど、あの様な球を一つ追えば終わるように簡単じゃないのですが……組織で紅魔館にくる連中も来るんですよ?ましてや異変解決までなんてできるわけないでしょう……」
「異変解決は言い過ぎにしても、この紅魔館を護るからには絶対の盾でいなさい。そうでもないなら、いない方がいいわ。だから、あなたを一度解雇する。出て行きなさい」
「……はぁ」
妖怪の山麓、長身の身に緑のチャイナドレス風の服と、いつも通りの姿の美鈴は今日何度目かのため息をついていた。
彼女が何故わざわざ妖怪の山にいるのか。妖怪の山の監視の任についている白狼天狗の犬走椛も疑問に思ったのだろう。美鈴に話しかけた。
「美鈴さん、どうしてこんな所に来たのですか?面倒事ならできれば他所で済ませて欲しいのですが」
「ははっ、大丈夫ですよ。今の私には何もありませんから……」
「そ、そうですか……」
椛は直感的に関わらない方がいいだろうと思い、そそくさとその場を後にした。
美鈴はそんな椛をちらっと一度見た後、フラフラと歩き、野宿に良さそうな場所を探した。
その時である
「きゃっ!」
「ひゃんっ!」
木で隠れた死角から一人の女が現れ、美鈴とぶつかった。
その人物は、ピンク色の髪の頭にシニョンカップ、左腕に手錠をし、右腕は包帯に包まれて、胸元には牡丹の花飾りと茨模様があった。
その女性はぶつかった美鈴に頭を下げた。
「すみません、不注意でした」
「あ、いえいえ。えっと……」
美鈴→アイデア (55)
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