R.O.M -数字喰い虫- 3/4
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―――――――。
―――――――――、…………あれ?
私は、今まで何を考えて泣いていたのか。瞳の下をなぞる涙に、ふと疑問を抱いて困惑した。
頭を捻って考える。ううんうんうなって考える。だが、答えは出なかった。
ふと気が付くとそこは見覚えのない部屋で、目の前には『見知らぬ女の子』が立ち尽くしてた。
「えーっと………誰ですかあなた?」
「美咲……?私の事、分からないの?」
「えっ……みさきって、ひょっとして私の事?」
果たして自分は本当にそんな名前だったろうか?全く思い出せなかった。
いや、そもそも私の名前は、パーソナルネームとは何だ?親に貰った名前は何だったか?
考えるが、やはり思い出すことは出来なかった。
「うそ……うそよね、美咲。だって、さっきまで私の事覚えてたじゃない」
「さっきって言われても、さっきっていつさ?というかここ何所?なんか窓も閉めきって陰気くさいとこだね?」
「信じない。からかってるんでしょ?ノートを勝手に持って行ったあの時みたいに、嘘ついてるんだよね?もう、こんな時に悪ふざけは止めてよね!」
「ノート?……っていうかちょっと待って。マジで分からないんだってば!」
女の子の顔からみるみる血の気が引き、蒼白になっていく。
しかし、何がそんなに恐ろしいんだろうか。馴れ馴れしい砕けた口調だが、彼女は本当に私の友達なんだろうか。……そもそも友達がいたかもよく思い出せない。
記憶喪失。そんな言葉が脳裏をよぎった。
「………ねぇ、美咲。約束したよね……からだが良くなったら一緒にクレープ屋にいこうってさ。覚えてるよね?覚えてるって言って……!!」
縋るようなか細い声だった。放っておけばそのまま折れてしまう、硝子細工のような脆さを内包していた。でも、そう言われても今の私には彼女を満足させる答えを持ち合わせていない。
首をひねる私に目の前の少女は、もしかしたら、という淡い期待を抱いていた。
だが、そうでないのは私自身が良く知っている。
「……ゴメン。全然覚えてないみたい」
少女の顔が、絶望と悲嘆に崩れる。嗚咽を漏らして膝を床に付く。
「うそだ………こんな………嘘だぁあああああああああああああああああああああああッ!!!」
何か、決定的な何かが潰えるような慟哭。二度と赦されることのない罪を嘆くようにも、二度と会い見えることのない誰かを呼び止めるようにも、それは聞こえた。
なんで目の前の女の子は泣いているのか、そんなことも今の私には理解できなかった。
理由は簡単だ。『知らない人間が知らない事で嘆いている』のを見せられても、困惑するほかない。
例え彼女がどれほど悲しんでいても、私にとってそれはどこまでも他
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