R.O.M -数字喰い虫- 3/4
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頭が回るな。なら、また話を変えよう。ずっと気になってはいたんだが、君は何故彼女をあんな目に遭わせているんだ?」
「あ………そ、それは……」
春歌の態度がまた一転した。彼女は頭は回るが、感情が表に出やすいらしい。口元を抑えて言葉に詰まっている。
「見たところ友達意識がないわけでもないようだが、そこが分からないな。彼女を苦しめるために害意を以ってこの数列を見せるよう仕向けたんだろう?心配するくらいなら解除してやるなり何なり出来たんじゃないのか、君は?」
「――やめて、ください」
虫のさざめきよりも静かな、消え入るような声だった。
彼女は両目を充血させ、静かな涙を流していた。
「私だって。私だって……あんな風にまでなってしまうなんて、思わなかったんです」
「――ほう?では不慮の事故だったとでも言い張るかい?」
「ち、ちが……私はっ!!……た、ただ……美咲にちょっとは懲りてほしかったからあれを……あんな風になるなんて、知らなかったんです……!!」
「君が用意したのにかい?彼女の嫌いな数学のノートに、君が最も嫌いな芋虫が見えるよう仕組んで?」
春歌の涙がどんどん大粒になり、呼吸が乱れていく。激しく動揺したように目がぶれ、認めたくない己の罪を突きつけられているこの状況に心底狼狽していた。
意識的な行為と、激しい後悔。突発的な行動と無計画の結果。林太には彼女の行動がそのような、癇癪的なものに思えてきた。ある種で人間らしく年相応で、しかし導く結果が余りにも歪すぎる。
その感情の矛盾の理由を考えた林太は、ひとつの仮説が浮かび上がった。
「君は、ヨクジン固有の何らかの力、若しくは知識持ちながらも使いこなせてないない。だから、本当は軽く脅すつもりで仕掛けたはいいが解除の方法が分からなくなった――俺の仮説はどうだ?」
「――、…………………合って、ます」
「認めるんだな」
「貴方からは逃げられない。そう、思ってしまったから……それに、美咲が助かるのなら、それも贖罪になるから……」
親友を追い詰めて尚も隠し続けることに疲れ果てたのかもしれない。
諦めたのに、どこか未練をも断てたことに安堵するような溜息を漏らした春歌は、乱れた呼吸を整え、目元を赤く腫らしたままの顔で林太に告げた。
「私は、詳しい事までは知りません。ただ、貴方の言う『ヨクジン』の技術を………ほんの少しだけ保有しています。基礎が理解できるだけでコントロールなどできてもいませんが」
悔しそうに歯を食いしばりながら、彼女は真実の一端を語りだす。
林太が待ち望んでいた、「ヨクジン」を。
「ヨクジンとは、なんだ。人なのか?そうでないのか?集団なのか?それとも普遍的個体なのか?」
「詳しいことは分かりません。私もおじいちゃんの
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