R.O.M -数字喰い虫- 3/4
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に林太の服を掴んで揺さぶった。
見た目の細見とは思えない膂力に一瞬バランスを崩しかけるが、林太は焦らない。
「――憶測だけど、何の代償も無しに解放されることはないだろう。だが、逆を言えば代償を払えば人並には戻れるんじゃないかな?」
「代、償………でも、それでも……今のままでいさせるぐらいなら、その方がいいのかもしれない」
自分に言い聞かせるように春歌は呟いた。その顔には偽りのない葛藤と不安が渦巻いている。そして、その感情が向く先は自ら友人を名乗り、自らが貶めた一人の少女。彼女は、どうやら本気で美咲のことを慮り、心配しているらしい。そこに打算的な感情や演技は見受けられないのを直感的に感じる。
だが、そうだとしたら余計に分からない。何故彼女は美咲を自分で追い詰めていながらも彼女を治そうとしないのか。それとも美咲にあれを見られたのは不慮の事故なのか。或いはあれは永続的な効果があるのか。
取り留めもなく考え続けるのは時間の浪費でもある。林太は確認したいことから端的に問い詰める事にした。
「このノートに描かれた『数学の繭』は、現人類の理論では提唱もされていなければ発見もされていない。そんなものを、君はどこから持ち出してきた?それともこれは、君自身が書いたのかい?」
「………それは、言えません」
「それは君自身がヨクジンだからかな?」
「う………っ、ち、ちがう。私は、ヨクジンじゃない」
「だが、これはヨクジンの作ったものだと俺は考えている。何故かって?それは、今まで追い続けてきたヨクジンの気配が在るものは、悉く人間の精神に干渉する物だったからさ。まるで実験を繰り返しているように、ヨクジンの影は人の心を揺るがしていた」
マヌタラに始まる正体不明の禁止薬物。訪問販売や音楽、果てはネットゲームまで、林太とメリーが追い続けたヨクジンの影には、常に精神に干渉するなにかが存在していた。つまり、ヨクジンは少なくともそのような催眠的技術を擁した存在ということが推測された。
彼女もまた、どこかでそれに連なっている筈だ。
「質問を変えようか。君自身がこれを書いたかという質問に答えられない、その理由は?」
「言えば……殺されるかもしれないから。貴方に」
「俺に、かい?」
「貴方がどこまでヨクジンについて知っていて、ヨクジンをどうしようとしているのかは分からない。でも貴方はヨクジンの情報を知りたがっているのは分かった。だから言えない。私の生命に保険がない今は決して言えない。貴方も情報源である可能性の高い私に下手な真似は出来ない筈でしょ?」
不安を隠しきれないながらも、鋭い目で牽制するように言い放った。
ここでこれ以上追及しても得られる情報はなさそうだ。一旦後に回すべきだろう。
「学生のくせに意外と
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