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無欠の刃
下忍編
形見
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………

 名前は呪だ。
 呼べば呼ぶほどに、その名前が自分の体をじわじわと縛っていくのだ。

 我しか愛さない阿修羅。

 その名前に秘められるだろう意味が、どれほど彼をさいなみ、苦しめたのか。
 カトナは知らない。
 ただ、わかるのだ。
 本当の彼をねじ曲げさせられて、他人が思う彼を押し付けられていったことを、彼女は分かってしまうのだ。
 カトナもまた同じくして、名前に縛られたものだからこそ、何も言わずに、語らなくても、分かってしまうのだ。
 言葉には言霊が籠められている。呟けば呟くほどに、それは力をもち、その言葉を現実のものへとたらしめる。
 不用意な発言をすれば、それは自分と周りの人々の不幸を招くこととなる。
 化け物だと言われ続けられて、傷ついた幼い子供が、どうしてそう言われるのかなんて、カトナは知らない。
 でも、そう言われたら、どれくらい傷つくのかぐらい、カトナはわかっている。

 不幸だな、私も彼も。
 彼は愛を失って、押し付けられた価値観に従って、本来の性格を名前の意味で歪められてしまった。
 自分とまったく同じでないかと、カトナは自嘲して。
 ああ、でも違うかと。
 カトナはそこから思い直した、
 何故なら彼のそばには誰もいないが、カトナのそばには誰かがいるのだ。
 それはもちろん、ナルトのそばにでもある。
 謀っているからかもしれなくても、それでもあいつらが、ナルトを好きでいてくれるのは本当だから。
 カトナは満たされていて。けれど、彼は充たされていないのかもしれない。
 だからこそ、せめて、自分だけはきちんと彼の名前を呼んでやろうと、そう思ったのだ。

 「我愛羅」

 もう一度呼ばれて、我愛羅は慌ててカトナの腕を払いのけると、足をじりじりと後退させる。
 彼のなかに渦巻く感情がいう。
 何を恐れることがあるのだと。
 俺は殺すことでしか自分が生きていると実感できない、化け物でしかないのにと。
 俺が生きることを許されるのはそれしかないのにと。
 けれども、体が芯から冷えていく感覚が止まらない。それなのに、胸の奥はどくどくと音をたてているから、不思議だと思った。
 姉や兄でさえ、自分を恐れているというのに、なのにどうしてお前はそんなにも気がねなく、化け物の名前を呼ぶんだ。
 恐れるような視線を意にも介さず、カトナは手を伸ばす。
 恐れが全身の毛を逆立てさせる。
 苦しみともとれるようなしびれが全身を覆い、体がひどく重たくなった。
 それでも、砂の盾は動き出す。
 けれど、彼女の手を止めるにはいたらず、ばちりという音と共にチャクラが弾けてしまい、壁がなくなる。
 こぼれた砂がさらさらと地面を埋め尽くしていくのを見ていた我愛羅は、触れられる直前で、脇
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