第三章
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「そうして代々なのね」
「そう、受け継いでいくものなの」
「白無垢はね」
即ち結婚衣装はというのだ。
「そうしたものだから」
「お願いね」
「うん、じゃあ私に女の子が産まれたら」
その時はとだ、優香里も二人ににこりと笑って答えた。
「その娘に白無垢渡すわ」
「そうしてね」
「じゃあお母さんからね」
母がだ、優香里に言って来た。
「これから優香里ちゃんに白無垢渡すから」
「それを私が着て」
「幸せになってね」
その運命の人と一緒になって、というのだ。
「そうしてね」
「うん、私幸せになるから」
優香里もだ、母に笑顔で約束した。
「あの人と」
「絶対によ」
母もその娘に笑顔で応える、そうしてだった。
優香里は結納のその日に地元の最も大きな神社で神式の結婚式を挙げた。その時にその白無垢を着てだった。
純白のその着物の袖や脚のところを見てだ、着るのを手伝ってくれた祖母と母に対して夢を見る顔で語った。
「夢じゃないわよね」
「そう、夢じゃなくてね」
「優香里ちゃん今白無垢を着てるのよ」
「そして今からね」
「結婚するのよ」
「私お嫁さんになるのよね」
またこう言った優香里だった。
「嘘みたい、けれど」
「嘘じゃないから」
「実際にだからね」
「さあ、今からね」
「幸せになってね」
「そうなっていいのね」
祖母と母に言われてもだ、まだ夢見心地の優香里だった。しかしその白無垢姿の自分自身を立ち鏡で見てだった。
そしてだ、また言ったのだった。
「ずっと憧れてたけれど」
「どう?今の優香里ちゃんの姿」
「花嫁姿は」
「いいでしょ」
「自分自身が奇麗に見えるわよね」
「私こんなに奇麗だった?」
このこともだ、信じられないという顔で言う優香里だった。
「そんな筈ないのに」
「それが白無垢よ」
「白無垢は女の人をこれ以上はないまでに奇麗にしてくれるの」
「結婚は一世一代の晴れ姿だから」
「その時を飾ってくれるものだから」
それ故にというのだ。
「優香里ちゃんもね」
「今最高に奇麗なのよ」
「だからね」
「最高の気持ちで幸せになってね」
それも最高の幸せを手に入れてというのだ、そして実際にだった。
優香里はその相手と一緒になった、それからすぐに男の子を産んでもう一人男の子を産んでだった。三人目は。
女の子だった、自分と同じ顔のその娘の顔を見てだ、優香里は祖母、母とと同じ笑みになってそのうえで夫に言った。
「白無垢はこの娘にあげるわ」
「そうするんだね」
「お祖母ちゃんとお母さんとの約束だから」
だからだというのだった。
「そうするわ」
「そして今度はだね」
「この娘が幸せになるのよ」
祖母と母、そして自分の様にだ。
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