二十九話 決着
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勝利を得るのは難し過ぎる
しかし狂夜は後者に決めた。
何よりも神那の為に一発ぶちこんでやらなければいけない。
いや神那だけでは無い
白夜もアゲハもこいつが勝手に使ったんだ。
だから入れてやる。
確実に一発。
その懐に…
――…懐?たしか裕海の懐には一つ障害物がある筈だ。
狂夜は右足を大きく踏み込んで裕海に向かい音速を越えた速さで突撃した。
裕海は極限まで近づいてきた狂夜を『変形葉』で断ち切った。
しかし刀は空を斬り、狂夜は空を蹴り、裕海が刀を大振りで外した瞬間に再び空を蹴って裕海に向かって拳を振るう。
確実に隙を奪った。
――これで裕海は終わりか?
――いや、そんなものでは終わらない。
確実に当てられた筈の狂夜の左手は、裕海の迎撃によって、後ろに斬り飛ばされていた。
狂夜の左手から血が噴出した。
「ふん、解っていないはずが…なッ!?…」
裕海の台詞は途絶えた。
何故か?
狂夜は笑っていた。
左手を切り落とされて地獄のような痛みが身体を引き裂いているだろう。
しかし笑っている。
何故か?
裕海には理由がわかった。
いや、わかってしまった。
先ほど斬り飛ばした左手にモノが握られていたから。
何よりもデリケートなそれを手で守るようにして…
…彼は既に託すために戦っていた。
そして狂夜は握り締めていた右手の拳を裕海にぶつける。
斬るより殴るほうが速い。
狂夜は左手に注目を集め、右手に注目がいかないようにしていた。
狂夜の重い一撃を受けながら、裕海は自重気味に笑った。
「やっぱり君も…新月家の人間だな…」
裕海は勢いよく後ろに吹き飛んだ。
「…やはり…だめだったか…」
狂夜もその場にドサッと倒れた。
意識が完全に飛ぶ前に目蓋に少女が映し出された
――…もし本当に神が居るとするなら…あと少しだけ…猶予をくれ…
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「…うや」
――誰だ?
「狂夜!」
――…ああ、お前らか…
狂夜の視界に映るのは、白夜達だ。
「すまねぇな…裕海…取り逃がしちまったぜ…」
白夜は強く首を横に振った。
「狂夜ぁ…どうして…どうしてぇ…」
白夜の目から涙が零れる。
狂夜は白夜の涙の溜まった瞳を指で拭う。
「白夜…せっかくの綺麗な顔が涙でぐしゃぐしゃだぜ…」
「だって…狂夜…心臓が…」
狂夜の胸には穴が開いていて、心臓が取り出
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