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リリカルってなんですか?
A's編
第三十二話 裏 前 (リィーンフォース、はやて)
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は、もはやはやてには制御不能なものである。ずっと望んでいた、渇望していたものが手に触れられるところにあるのだ。感情があふれて制御不能になってしまったのは責められることではない。

 だが、その感情に触れられて嬉しいと感じられたと同時に浮かび上がってくるのは最大級の罪悪感だ。

 翔太はこんなに信じてくれたのに、自分を必要としてくれたのに。それにも関わらずはやては信じることができなかった。信じなかった。冷たい瞳で翔太の言葉を一蹴してしまった。

 そのことに気付いたはやてに次の瞬間にはやての心を支配したのは恐怖だ。それは、翔太に嫌われてしまうかもしれないという恐怖だ。彼の心情はいわば、あの時のはやてに近い。はやてが信じたように翔太が信じてくれているのならば、その信じた心を裏切ったのははやてだ。

 確かに、見知らぬ誰かに唆されたのかもしれないが、それでも信じるべきだったのだ。翔太がはやてを信じたように、はやても翔太を信じるべきだった。だが、現実は残酷だ。翔太ははやてを信じ、はやては翔太を信じられなかった。その結果、はやてを襲うのはすさまじいまでの恐怖だ。

 翔太は信じてくれたのに、はやては信じられないと口にしてしまったのだ。それを拒絶と取られてもおかしい話ではない。むしろ、それが自然だ。もしかしたら、愛想を尽かされて捨てられるかもしれない。ようやく、触れられたのに、それさえも捨てて、捨てられてしまうかもしれない。

 考えれば、考えるほどに、嫌な考えが浮かんでしまう。突き放されてしまうかもしれない。見捨てられるかもしれない。恐怖が恐怖を生む泥沼だった。

 はやてが翔太にできることは、ただただ謝罪することだけだ。許してもらえるなら、どんなことだってやるつもりだった。

 だが、はやての恐怖と心配とは裏腹に翔太の返答はあっさりとしたものだった。

「うん、僕が言うことじゃないかもしれないけど、大丈夫、僕ははやてちゃんを許すよ」

 ―――ああ、どうして私は、ショウくんを信じられんかったんやろうか。

 こんなにも優しいのに、自分を受け入れてくれるのに、一人にしないと言ってくれたのに。傷つくことを恐れて、信じることができなかった。

 もっとも、はやての一桁の年齢の少女に対して、それを求めるのは酷な話だろうが、それでも翔太が信じた以上、はやてが翔太の様に信じられなかったことははやての心を罪悪感で押しつぶそうとするには十分だった。

 しかし、それでも、それでもはやては翔太の言葉に安心した。安心してしまった。あの温かさを手放す心配がなくなって、自分が一人ではないことを確信できて。おそらく、自分の人生というのは短い時間の最期まで一人ではないことに安心した。

 ああ、そうだ。八神はやては、翔太という存在を得てお
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