A's編
第三十二話 裏 前 (リィーンフォース、はやて)
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はやては翔太と会談することにしたのだ。
ただし、これ以上、傷つきたくないがために心に最大限の防御をもって臨むのだが。
彼女の心は、期待が少しと不安が大部分を占めていた。翔太とのはやてにとって都合のいい、よすぎる展開は、世界は自分を幸せにするつもりがない、と思い込んでしまった少女にとって不利に働いていた。
だから、翔太の口から「ごめん」謝罪の言葉が発せられた時は歓喜する自分の心を抑えるのが大変だった。
一度、痛い目を見ておきながら、みすみす二度目になる必要はないとはやては、彼の謝罪を信じることができなかった。いや、正確には違う。本当は信じたい。翔太の謝罪を、翔太の口から発せられるはやてを慈しむ言葉を信じたい。だが、これまでの経験が、都合のよすぎる事実がはやての信じたいという心にブレーキをかける。
―――本当に信じていいのか? また、心が押しつぶされそうなほどの絶望を味わうのではないか?
誰よりも本当に信じられ、身近に沿って立つ存在―――家族を求めているのに、今のはやては誰よりも家族に、家族という言葉に臆病になっていた。
「信じられんわ……」
信じたい。だけど、信じられない。その二つの感情がせめぎ合う狂おしいまでの二律背反。
そんな彼女の心の悩みを解消したのははやてを主と仰ぐ信頼すべきデバイスであり、彼女が新しい名前を与えたリィンフォースだった。
「―――主、そこの少年は嘘を口にしておりませんよ。本心のようです」
「ほ、ほんまか?」
そこに込められたのは、ほんのわずかだった望みがかなうかもしれないという希望だ。何度も裏切られようとも、あの温かい心に触れられるかもしれないという希望は捨てがたいものだった。得られるものなら肯定してほしい、と願うのは悪だろうか。
そんな彼女の心を読み取ったのか、傍に控えていたリィンフォースはすべてを包み込むような安心させる笑みを浮かべて頷いた。
「ええ、間違いありません。主から賜った祝福の風―――リインフォースの名にかけて、私の言葉が嘘、偽りでないことを保証いたします」
リィンフォースがそう答えた瞬間、はやての視界に広がったのは、大きな海原のような光景。その海原に触れたなら否が応でも知ることができただろう。彼の心に。つまり、はやての目の前に広がっているのは翔太の心の風景だった。その海原から感じられたのははやてを包み込むほどの温かさだ。はやてが求めてやまなかった人の温もりであった。
―――ああ、私が欲しかったのはこれや。
誰かが自分を慈しんでくれる心。心配してくれる心。そして、何より寄り添ってくれる心。
その感情に触れた瞬間、はやての瞳から涙が零れ落ちるのを感じた。
ぽろぽろと零れ落ちる雫。それ
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