A's編
第三十二話 裏 前 (リィーンフォース、はやて)
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ことの、自分の力が及ばなかったことへの後悔に過ぎない。
今回の旅路そのものを後悔するわけではないのだ。
彼女にとってはそれで、それだけでも十分だった。今までの結末を思えば、それは彼らにとっては救いであると彼女は断言できた。
だから、だから今回の旅路で彼らがこの血に塗れた宿命から解放されたことは喜ぶべきことだ。これ以上、彼らを付き合うことはない。この宿命に身を投じるのは、旅路の終焉の旅に身を引き裂くような悲しみと後悔を感じるのは自分一人で十分だ。
それだけの覚悟は既に持っている。
―――先に逝っていてくれ。私もいつか壊れたその先にお前たちの元へと逝こう。
はたして0と1の集合体でしかない自分や彼らに死後の世界があるのか、彼女はわからない。だが、そう信じてもいいのではないだろうか。ともに笑い、泣き、後悔した彼らにせめて死後の安らぎを期待しても。
だから、彼女が想うはたった一つ――――守護騎士たちを家族と迎えてくれた心優しい小さな主である八神はやてのことである。
その主は今、愛用の車椅子の上ですやすやと眠っている。いや、眠らせているというほうが正しいだろう。あの、執務官から衝撃の事実を聞かされたあと、絶望する主の心を保つためには仕方ない処理だった。あのまま、絶望する彼女を放置していれば彼女は壊れていた。物理的にではない、精神的にだ。
守護騎士を失った彼女にとって最後の支えはあの少年だった。守護騎士と出会う前であれば耐えられた孤独も守護騎士と出会ってから、家族という禁断の果実を食べてしまったはやてには到底耐えきれるものではなかった。そんな彼女にとって翔太という少年は、まさしく最後の希望だったのだ。
それが裏切られた。いや、そうなるように仕向けられた。はやては翔太を心の底から信じていたのだ。それが裏切られた。
その裏切りを、家族を失うかもしれない、孤独になるかもしれないという恐怖に幼い心は耐えられなかった。
はやてがいくら年不相応な態度をとっていようとも、彼女は本来であれば、親の愛情を受けて育っている両手で数えられる程度の子供なのだ。その孤独に耐え切れないことを責める人間がいるだろうか。
はやてはその裏切りを、孤独を直視できず、結果、目の前の世界を否定してしまった。
―――こんな世界なんていらないっ! と。
その感情が、主の絶望ともいえる感情こそがトリガー。闇の書が完全に覚醒してしまうことへの。一度、闇の書が完全に覚醒してしまえば、もはや闇の書の管理人格にできることはない。ただ、滅びという名の終焉に向かっていくだけである。
もはや、この段階に至ってしまっては、闇の書ができることは一つだけである。それは、守護騎士たちが命を賭してまで守ろうとした
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