A's編
第三十二話 裏 前 (リィーンフォース、はやて)
[11/11]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
しまいそうな言葉だった。もしかしたら、本当に欲しいものが得られるという他人から与えられた保障にすがっているだけなのかもしれないが。
だが、はやてが信じられないと告げたにもかかわらずはやてを信じた翔太の言葉なのだ。現時点で一番はやての家族と呼ぶにふさわしい人物なのだ。だから、それだけで彼の言葉は信じるに値する。
翔太の言葉を聞いて、はやては将来の自分の家族を想像する。
一般的な家族というのは、父親がいて、母親がいて子どもがいるのだろうか。はやての想像の中では、母親は大人になったはやてであり、父親は一番家族に近いといえる翔太だった。そして、一緒に食卓を囲むのは、シグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラだ。
ああ、そんな家族が実現すれば実に楽しいだろうな、自分はもう一人ではないだろうな、と夢見てしまうのは今まで一人だった少女を想えば仕方のないことだ。はやては将来があるのだと信じたかった。
いや、信じる、信じないではない。そんな将来はすぐ近くにあるではないか。
はやての目は目の前でにこやかにほほ笑んでいる翔太の顔を取られていた。
彼女の想像は夢のような虚像ではあるが、実現可能な想像だ。今、はやての家族に一番近い存在は翔太を置いてほかにいない。翔太以上にはやてを包んでくれるような温かさをもって接してくれる人が現れる保証はどこにもない。だから、先ほどの想像でも翔太が家族だった。
先ほどの想像が実現可能だと、それを求められるということに気付いた瞬間、はやては無性に欲しくなった。想像を現実にできるような家族が。翔太と作る極寒の中にあるような家ではない温かい、孤独ではない家族が。
それは、きっときっと楽しい想像で、夢を見るようなもので、それでも、実現したい夢だった。信じたい夢だった。だから、はやては翔太が気付いてくれますように、と願いを込めて言う。
「でも! ここまで言うんやから、もしも、私に素敵な家族ができんかったら責任は取ってもらうで!」
孤独だった少女は、ある日、魔法の存在によって家族を知り、ある日、家族を奪われ、そして、最後に家族になりたい少年によって救われた。襲われている困難を越えた先に少女が夢見る将来を実現できるのか。それは、未だ誰にもわからないものである。
ただ、ただ―――孤独だった一人の少女は、純粋に将来、自分と彼が作る家族を夢見るのだった。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ