A's編
第三十二話 裏 前 (リィーンフォース、はやて)
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「申し訳ありません、主」
星々が瞬くような淡い光が発する暗闇―――彼女の本来の名前である夜を現したような空間の中で、この空間の主である闇の書の管理人格は、自分の所有者である車椅子に座ったまま眠る少女に頭を下げていた。その顔に浮かぶのは、深い懺悔と後悔と悲しみだ。
一体、幾回同じような結末に至っただろうか、と闇の書―――本来の名前で言うなら夜天の書だが、彼女自身はすでにその名を冠するにふさわしいとは思っていない―――の管理人格は考える。しかし、それは考えても詮無きことだった。なぜなら、それは彼女が存在した時間の中で、この結末に至った時間のほうが多いのだから。すでに数えることさえ放棄している。ただ、言えることは、夜天の書と呼ばれたデバイスは血と憎しみと悲しみで彩られており、現在の闇の書の名前に違和感がないということである。
主を呪い殺すデバイス―――それは、既にデバイスという定義から外れている。デバイスとは主を手助けするはずのもの。それこそが存在意義であるはずだ。だが、闇の書はその性質からは真逆の性質を持つ。もはや、デバイスと呼んでいいのかすら疑問だ。闇の書の管理人格が、己の存在意義と現状の乖離に自壊しないのは、ひとえに彼女が解放され、稼働する時間が極端に制限されるためであろう。
―――今回も、この結末に至ってしまった………。
いや、それは最初からわかっていたことである。たとえ、今回の主が今までとは毛色が異なろうとも、周囲の状況が異なろうとも、闇の書が至る結末はいつだって同じで、同じだった。
―――せめての幸いは、我が騎士たちをこれ以上の不幸に付き合わせることがないことだろうか。
そう、それが、それだけが今回の結末の中でのせめてもの幸いである。
闇の書の我が騎士―――ヴォルケンリッタ―と呼ばれる四人の騎士たち。彼らは、闇の書の核とは異なる外部のソフトウェアのようなものである。ソフトウェアであるだけに闇の書が健在である限りは、いくらでも再生は可能だった。記憶などの情報も闇の書の内部に蓄えられているため、そのままの状態での再生だ。
だが、今回は事情が異なる。
文字通りすべてを奪われたのだ。端末の一つからサーバー本体に侵入されたのだ。それは、性質の悪いことに、ヴォルケンリッタ―を構成する部分だけを文字通り奪っていった。闇の書を構成する部分に触れたならば、防衛機能が働いただろうが、それは闇の書の部分には触れることなく去って行ったため、ヴォルケンリッタ―だけが奪われた形となる。
無限の転生機能を持つ闇の書ではあるが、さすがに闇の書を構成する部分以外の転生は不可能だろう。そもそも、ヴォルケンリッタ―が欠落することなどが考慮されていたかどうかも疑問だ。彼らは闇の書と共にあり、共に生
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