第二部
第二章 〜対連合軍〜
九十九 〜開戦〜
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ような男なんて、他にはいないでしょう?」
負け戦にも関わらず、華琳には口惜しさは感じられぬ。
「ま、いいわ。そもそも、こんな馬鹿な作戦じゃ被害が出て当然だものね」
「やはり、袁術の指示か」
「私が、こんな愚劣な真似を進んでする訳がないじゃない。勅令じゃなかったら、そもそもが馬鹿げている事ばかりだけど」
「良いのか? そのように勅令を軽んじても」
「軽んじていたら、最初から出兵なんてしないわよ。……でも、覚悟する事ね」
華琳は、笑いを収めた。
「いつか、貴方を私の前に跪かせてみせるから。それまで、何としても生き延びる事ね」
「……また、その話か」
「言った筈よ、私は狙った獲物は逃がさないと。隣にいる徐晃と張遼も、勿論同じよ」
「曹操殿、それは適いますまい」
「せやせや。歳っちや月を甘く見たらアカンで?」
にべもなく撥ね付ける二人に、華琳は苦笑する。
「ふふ、いいわいいわ。その調子で、もっと私を愉しませなさい」
「華琳こそ、降るなら今のうちだぞ?」
「あっはっは、面白い冗談ね。そうね、私を屈服させられたら考えてもいいわ」
「用はそれだけか?」
「ええ。貴方が降伏する、とでも言ってくれれば一番良かったけどね」
「言うだけ無駄、そういう事だ」
「わかっているわ」
「土方様!」
そこに、兵が駆け寄ってきた。
「何か?」
「はっ!」
兵は、疾風に何事かを告げた。
「そうか。……ご苦労だった」
「ははっ!」
疾風はチラ、と華琳に目をやってから、
「どうやら、敵が小細工を図ったようです」
「ほう」
「……このシ水関に通じる、獣道を伝って少数の兵が奇襲をかけてきました」
「何やて? そないな道、あったんかいな?」
霞の驚きは、どうやら芝居ではないようだ。
「ああ。隈無くこの辺りを調べている最中に見つけた」
「で、どないなった?」
「紫苑の隊が待ち受け、散々に打ち破った。敵は引くもままならず、生き残った者は全員降伏したようだ」
そういう事か。
「華琳。こうしてやって来たのは、お前の意思か?」
「それもあるわ。でも、袁術が勧めたのよ……どうせ、よからぬ事でも企んでいるんでしょうけど」
「そうか。……ならば、帰って袁術に伝えよ。小細工などお見通しだと、な」
「……ええ、確かに伝えるわ」
そう言うと、華琳は踵を返した。
「歳っち。……もしかして、知っとったんか?」
「うむ、疾風から聞かされていた。それ故、禀が手を打ったまでの事だ」
「う〜ん、やっぱ歳っちには敵わへんなぁ。紫苑やのうてウチ、そないな理由もあったとはなぁ」
「済まんな、霞。敵を欺くには何とやら、でな」
「ま、しゃあない。その代わり、戦が終わったら一杯奢って貰うで?」
「わかったわかった」
その夜。
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