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異々、心葉帖。ことこと、こころばちょう。〜クコ皇国の茶師〜
プロローグ
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らいいの?」
「よいか? そもそも茶師というのはな、生命の樹であるヴェレ・ウェレル・ラウルスの葉が一枚一枚もつ適正を判断し、茶葉として使えるようアゥマを注ぎ込む――つまり、浄錬《じょうれん》するっちゅー職人のことじゃ」
「ふんふん」
「その浄錬の修行は職についてからもするべきものであるからに、おぬしもまずその術を学ぶべきところから――」
「だから、どうすればいいの!?」
くどくどと。葉っぱの詰まった茶壷からお茶が出るようなはやさで話し続ける小人に痺れをきらし、蒼が地団太を踏んだ。
一瞬だけ小人の瞳が見開かれるが、すぐに「最近の若いもんは自分で考えるっつーことを」と肩を落とす。至極小さい声は蒼の耳には届かず、ただ愛らしい眉が怪訝に顰められただけだった。
「まぁ、よいか」と気をとりなおした小人の口から飛び出る咳払い。それが合図となり、淡かった光が色を変える。いつの間にか、肌のすぐ傍にも、ゆらゆらと、何もないはずの空間から溢れてきていた。
「蒼、お主が人の心と身体へと流れ込む、龍脈《りゅうみゃく》の泉たるヴェレ・ウェレル・ラウルスに誓うに値する願いと想いがあるならば、母たる樹に成り代わり、此処が溜まりの守人たる我が祝福を授けよう」
少しばかり畏まった小人はすぐに「形式であるからしてこのように難しい言い方をするが、要は人の口へ入る物に責任を負う勇気があるかということじゃ」と表情を崩し微笑んだ。伝わってくる温度は至って暖かいものだったが、真っ直ぐに向けられる視線は蒼を射る。
思わぬ方向へ進む話に、ごくりと蒼の乾いた喉がなった。つばを飲み込む音が、喉元にひっかかって耳に響いてくる。一緒に跳ね上がった心臓は静かになるどころか、時間が流れるほどに煩さと熱を増していって。
けれど、今下を向いてしまえばもう二度と自分を包んでくれている光たちと話せない気がして。蒼は光たちも一緒というくらい、思いっきり鼻に空気を吸い込んだ。凛と開かれた瞳が小人を映した。
「では、此処が溜まりの守人《もりびと》麒淵《きえん》が契りを交わそう。人が心、人が身体、そして基盤たるものへと耳を傾ける茶師となれ!」
やんややんやと、光が騒いだ。
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