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異々、心葉帖。ことこと、こころばちょう。〜クコ皇国の茶師〜
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すんなりと開いた扉に瞬きをしたまま、それでも叱られることを覚悟してまできた蔵の中へと、靴音を響かせた。どうしても、自分の目で『あれ』を見たいのだ。
背の後ろからおじいのいびきのような音が数秒聞こえるが、それも直ぐに消え、耳が痛むほどの静寂が戻った。それが余計にどくんどくと騒いでいる鼓動を体中に響かせ、苦しくなる。がっちりとお見合いさせたままの奥歯がききっと歌った。
「あれぇ、ここじゃないのかなぁ」
目を細めてみても、握り締めてきた灯玉を光らせてみても、見えるのは砂糖漬けの花や蜂蜜がたっぷりと詰まっている瓶だけ。蒼が見たいものは並んでいない。
やっぱり、ちょっとばかりやかましく軋む角灯でも、持ってくるべきだったのかもしれない。枕元においておく、仄かにしか灯りをくれない灯玉だけでは何だか心細いと、蒼は数分前の自分をちょっとばかり恨んだ。
月明かりがにぎやかな夜とはいえ、窓がほとんどない蔵の中は吸い込まれてしまいそうな暗さだ。蒼は「うぅ」と唸り声をあげた。
それでもきゅっと手を握り、前を見据える蒼。少しばかり歩き続けると下へ降りる階段と、上へと上る階段が蒼の前に姿を現した。さらに暗くなっている階段を数分睨んだ後、蒼は月明かりが差し込んでいる二階へ上がる階段に足をかけた。半分腰引けながらも足を動かす蒼を、足元にある階段がきしっと笑った気がするが。蒼は挫けそうな気持ちを押し込めて、一歩一歩階段を上った。
そうして、最後の一段を踏みしめた時。
「わぁあー!」
一瞬、蛍かと思った。
「んっしょっ」という声で階段口から顔を出した蒼を出迎えたのは、戸棚に行儀よく座っている光たちで。思わず、一音高い声が出た。じんわりと手の内側で染み出ていた汗も、弾けてしまったような気がした。あんまり大きな口をぽっかりと開けてしまったので一斉に流れ込んできた冷たい空気に咳が出てしまう。
瞼を擦りよくよく見れば、そこにある光は塊ではなく、何かから染み出ているようだ。もしかしたら、これが自分が見てみたかった、茶葉のしゃべるところ。蒼の足は、緊張と興奮で固まったまま動けずにいる。
そうこうしている間に、目の前をゆっくりと流れていた雲がやっと通り過ぎ、天井近くにある窓から差し込んできた月光が照らし出したのは――。
「びーどろの入れ物?」
最初目にした時には一色だった光は、いつの間にか纏う色彩を変えていた。一番低い棚のソレを手にとって見ると、実際に光を放っていたのは瓶の中身だとわかった。店先で茶葉が入っているのと同じちょっと厚めの瓶。
そして、中にあるのも同じ、蒼も見慣れたお茶の葉だった。ただ、どうにも店先に並んでいるものと違う香りがする。ような気がした。
くんかくんかと、鼻が香りの流れを吸い込む。
「おぬし、茶葉
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