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駄目親父としっかり娘の珍道中
第68話 女の子は父親似の男に惹かれるんだってさ
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達任せじゃねぇか!)

 それは銀時の声だった。銀時の声でそう罵られたのだ。

「お父さん……私は、私はお父さんや皆の為にずっと―――」
(もうお前を育てるのなんざ沢山だ! とっとと俺の前から消え失せろ!)
「嫌だ! 捨てないでよ……私を一人にしないで! 一人ぼっちは嫌だ! だからお願い、私を捨てないで……一人にしないで!」

 幾ら否定しようと、幾ら振り払おうと、黒い影は濃くなり、なのはの幼い心を容赦なくズタズタに傷つけていった。次第に叫びは悲鳴に似た物へと変わり、目からは涙が零れ落ち、激しく首を振り続けていた。
 突然、泣き叫んでいたなのはを何かが包み込んだ。怯える鼻先には男の胸板があった。
 捨て子の不安と恐怖に打ちのめされていたなのはを、男はそっとその腕で抱きしめたのだ。

「怖いか……一人ぼっちになる事が」
「うん……もう、一人ぼっちは……いや……」
「安心しろ。俺はお前を捨てやしない。あいつが捨てたとしても、俺はお前を守ってやる。だから安心しろ」
「お……叔父さん……うぅ……うぅぅ―――」

 気が付けば、男に縋り付きなのはは思いの丈をぶつけるかの様に大声で泣いた。今まで必死に隠し続けてきた捨て子だった自分への不安。それを今、目の前に居る男に全てぶつけるかの様に泣き喚いたのだ。
 そんななのはを男は優しく包み込み、幼いその頭をそっと撫でていた。
 不思議な感覚だった。この男からは父銀時と同じ温もりを感じる。不思議とこの男と一緒に居ると心が安らぐようにも思える。
 まるで、父銀時と一緒に居るような感覚だった。とても安心出来る感じだった。
 どれ位時間が経っただろうか。散々泣き喚いた後で、なのはは深い眠りについてしまった。
 男の腕の中で、静かに寝息を立てている。そんななのはを抱き抱え、男は笑みを浮かべた。

「そうだ、お前は俺が守ってやる。今度こそ……お前を死なせるような真似はしない。あの男は守れなかった。だが、俺は必ず守ってやる。必ずお前を守ってやるよ……紅夜叉」

 最後にぼそりと、誰かの名を呟いた。それが誰なのかは、この男『高杉晋介』にしか分からない。

「ようやく寝静まりましたかな?」
「しっかし随分泣き喚いてたっすねぇ、これだから子供ってのは」

 裏手の方から声と共に姿を現してきた。一人は派手な色の薄着の着物を着こなした女性。衣服の面積が狙ってるとしか思えないほど少なく、際どい感じの着物を身に纏っていた。
 もう一人はごく一般的な浪人の姿をしているが目線が何処となく変と言うか不気味な感じの男であった。

「しっかし訳分かんねぇっす。何でそんなちんちくりんが晋介様の大事な客人なんすか?」
「やれやれ、これだからお子様は困るんですよ。私にはわかりますよ。全く嘆かわしい」

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