第3部 始祖の祈祷書
最終章 虚無
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キオラの頭の中に、あのドス黒い何かは存在しなかった。
夕方……。
シエスタは弟たちを連れて、森から出ていた。
トリステイン軍が、草原に集結したアルビオン軍をやっつけたとの噂が、森に隠れていた村人に伝わったのだ。
アルビオン軍はトリステイン軍の突撃によって潰走し、多くの兵が投降したらしい。
確かに、昼間中、村を闊歩していたアルビオン兵の姿はない。
先ほどまで続いていた怒号や、剣戟や、爆発音は収まっていた。
草原には、黒煙が立ち上がっていたが、とりあえずはほんとに戦は終わったようだ。
空から爆音が聞こえてきた。
一度聞いたことのある音だ。
見上げる。
見慣れたものが空を舞っている。
『竜の羽衣』であった。
シエスタの顔が輝いた。
ゼロ戦をタルブの草原に着陸させたウルキオラは風防を開いた。
村の南の森から、誰かが駆けてくるのが見えた。
シエスタだった。
ウルキオラはゼロ戦から下りて、歩き出した。
ルイズは歩き出したウルキオラを見て、溜息をついた。
ま、あの子が生きてて良かったけど。
もっと私を労ってくれてもいいんじゃない?と思う。
先ほどの呪文……、虚無の系統、『エクスプロージョン』。
実感はない。
ゼロ(虚無)だけに、唱えた実感がないのかもしれない。
自分は本当に『虚無の使い手』なんだろうか?
なにかの間違いなんじゃないのか?
でも、ウルキオラは虚無を司る存在だと言っていた。
それに、伝説の使い魔『イーヴァルディー』のルーンが刻まれている。
それが、自分が虚無の使い手だということを肯定していた。
とにかく、これから忙しくなるだろう。
あまりにも実感がなくって……、自分が伝説の担い手ということが、信じられなくて、ルイズはぼんやりと溜息をついた。
これが夢だったら、どんだけ楽な気分かわからない。
でも、あまり深く考えないことにした。
その辺は、あの使い魔を見習おう。
ウルキオラ、伝説の使い魔のくせに、まったく気負いがない。
そのぐらいでいいのかもしれない。
とにかく自分には荷が重すぎるのだ。
『伝説』なんてものは。
操縦席に立てかけられたデルフリンガーが、そんなルイズに話しかける。
「よう、伝説の魔法使い」
「なによ、伝説の剣」
デルフリンガーはからかうような調子で、ルイズに言った。
「意地張るのもいいけど……、追いかけねえと、あの村娘に取られちまうぜ?」
ルイズは頬を赤く染めて、膨らませた。
「い、いいわよ…あんなの」
「本気かい?」
デルフリンガーが呟く。
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