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帝国の蛇
第1章 追放の身
◇1
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「リノス兄!」
「あぁ、ソーラか。」

今日はリノス兄が、家長を継ぐ日。
屋敷ではお祝いをすることになってるから、やれ御馳走だ、やれ衣装だと慌ただしかった。
それなりの名士を招くらしく、リノス兄やソフィア姉は表舞台に出るから大変だけど、わたしはそうでもない。
私―――ソーラ・エルファイアは、裏で働くものだから。


スゥエルミナは、エルファイア家の表の仮面だ。そう教えられてきた。

私たち一族は、暗殺を生業とする。
ただ、それを公にすることはできない。だからこのような仮面が、できたのである。
結論から言えば、スゥエルミナとエルファイア、二つの顔を持つ家と言えるだろう。

スゥエルミナ家家長は、代々長男が継ぐと、自動的に決まっている。表向きのスゥエルミナではあるが、本業を隠すためには欠かせぬ役割。それなりに責任は重い。
そして結婚し、子供を残す
一方でエルファイアは、長男長女を除く子供たちが、暗殺術を身につける場所だ。
以下の子供の籍はスゥエルミナには入らず、目立たないように血縁者の家に入るようになっている。そして、結婚はしない。一生をエルファイアのためだけに捧げ、エルファイアの秘密を守りとおす。

とまあ、やっていることがやっていることなので、当然家の使用人も信頼できるものばかりだ。大半が護身術なりなんなりを備えているのも、流石エルファイア家。


「ソーラは準備できてるのか?」
「勿論決まってるじゃない。だからこんな格好してるんでしょ。」
「こんな格好って………召し使いの服だろ。」
「だから嫌なんだってば。女用でしょ、これ。いつもと違って足がスースーするからやだ。」
今日は召し使いとして変装させられてるからその制服だけど…スカート。
いつも暗殺術つやってるためにズボンの私には不快だ、あんな布。

「仕方がないだろう。今日は」
「ソーラ!何やってるんだ!!」
突然の罵声。

「あ、ヴァリじゃない。あーいいなーズボンはいてるじゃん。」
「俺がスカートなんかはくわけないだろう…ってそうじゃない!!お前を呼びに来たんだよ!!」

ヴァリノス…通称ヴァリは私の双子の兄。
次期エルファイア家家長…頭領だ。

「どうかしたのか、ヴァリ。」
「ああ、ちょっとな…リノス兄の就任式があるからさ、部屋を掃除……つか要らねぇガラクタ処分してたんだけどな…なんか凄いもん見つけたから親父呼んだんだけどな。そしたらソーラ連れてこいとか。」
「へー。そんなすごいの見つけたんだ、ヴァリ。」
「お前の持ち場のはずの厨房探しても居ねーから屋敷中探し回って挙げ句此所かよ…で、怒鳴った。」
「質問無視しないで…確かに持ち場離れたのはまずかったかな。でも私の分終わったし。」
「終わったしってなぁ…ま、とにかく
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