K・K・K
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味もなく襲われ、それを庇った彼は死ぬことになった。
だが、大きくダメージを受けた筈の彼の脳も肉体も、夢の中の彼はハンデとして負っていなかった。
まるで、最初から無かったことのように。
「………つまり、創世……認識を世界として認識させた?世界を観測するまで世界は存在していない……私の見ている世界の認識を越えた?」
神は思案する。
ひょっとして彼の頭の中に形成されたこれは――『彼の作った世界』なのでは?
世界は、幾多にも重なる多層構造をしている。縦のも横にも、列としても分岐し続け、様々な次元を隔てた世界として同時存在している。そのように観測し、認識しているから。
彼の見る夢は、どうやらその世界のどれにも当て嵌まらない世界として存在しているようだ。
「彼の中にしか存在しない、きわめてパーソナルな世界。名付けるならば限定世界。彼だけの認識に存在する、オンリーワンの世界」
唯の夢だからどこにも存在しない、とも考える事は出来る。
夢は脳が記憶の整理をするついでに本人の心理状態を反映する高度な幻覚だ。
ゆえに、それは単純に実在しない。
だが、そもそも魂は夢など見ることが出来ない。
なぜなら夢は無意識であり、そして魂には意識も無意識も境がないからだ。
境がないということは、見ているすべてが夢であり現。本質的に違いがない。
にも拘らず彼は夢を見る。そして意識は夢へと旅立った。
彼は、『自分は死んでいない』というたったそれだけの思い込みで、法則を覆した。
それとも、こちらが法則だと思っていたそれこそが間違っていたのか。
世界はもともと『在るもの』と考えた神と、『出来るもの』と考えた彼。
その認識論の違いが、世界に歪を齎した。
結果、魂が抜けた体ではなく、魂の形をした謎の抜け殻が神の世界に残された。
自分の創世した世界に存在する彼と、魂だけの彼。現実と認識の矛盾として残されたのがこれか。
……気は進まないがまさか自分のミスが重なってこんなになってしまった体を放置するわけにもいかない。彼の魂が形として残っている以上、この身体の放置は彼の魂に空き影響を及ぼす。
「どうしようこれ……活動する気配ないし、現世の基準で言えば植物状態だよね。あーあ……取り敢えずベッドに寝かせておくかぁ。頭が痛いぃ……先輩助けてぇぇ〜〜〜ッ!!」
神は託司の身体をずるずる引きずりながら、先輩とやらに涙ぐんだ声で助けを求めた。
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