第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十七日・夜:『悪心影』
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竜《ラグニル》”であった。
『今や此処に、貴様以外は存在せぬ。脆弱な人間、哀れな人間! 貴様以外にはな!』
確かに。確かに、そうだ。“悪心影”は勿論、ショゴスの気配すらない。頼る事が出来るのは、最も脆弱な己のみであり。
『死ね、消えろ! 余が糧となってな!』
(………………)
圧力に、膝を突く。耐えきれる筈もない。そもそも、多寡が人間風情で……魔王に立ち向かおうとは、何事か。そんなモノは、何処かの勇者にでも任せておけば良かったのだ。それを、何をトチ狂って対馬嚆矢風情が代替しようとなどしたのか。
今更ながらに、苦笑する。嗚呼、何と愚かな話か。身に余るモノを得ようと振るっての破滅など、見飽きる程に目にした癖に。
(それ、でも)
それでも。
(生き、たい)
『生きたい』。その意志だけは、変わらない。今まで、幾多を犠牲にして生き永らえながら。今まで、幾多を犠牲にして生き永らえたから。
『■ぃに……』
恐らく、幽明で唯一の。人生で最初であろう、その記憶。ひしゃげた車のボディによる鋼の檻の中、周囲に燃え盛る焔。鼻を突く揮発油の臭い、腕の中で冷たくなっていく……■■■■に貰った、この生命で。
(生きて、識る。俺は、全てを識る────俺が殺した、あらゆる全てが識るべきだった……全てを!)
『キッ、貴様……!』
目を、見開く。見えもしない目を。それでも、見詰める為に。自らの全てを、為すべき事を。
何故ならば、それは────まやかしだ。刹那に消える、夢に他ならない。だからこそ、等の昔にあらゆる罪を犯した己には、相応しい末路であり。
『何、だと……まさか!』
(消えろ、有象無象。奴は、俺が殺る)
『…………出来るか、貴様に。甘ったれ、全てを忘れたような貴様に!』
(殺るさ。殺らなきゃ……喪う、それだけだ。俺は、俺の利己に戦う)
決意と共に、押し返す。津波の如き圧力は全て返り、喚き散らす邪竜への返歌となる。
思い出した、その一説。即ち、それこそが光明であり。故に、嚆矢は思い至る。
「そうか……まやかしだったな、お前は」
『ッ────ッッッ!』
初めて、邪竜が息を呑む。漸く、“悪心影”の言葉の意味に辿り着く。幾度もそう口にしていた、事実に。
最早、余裕しかなく。掌に乗る相手を見詰める。爬虫類、或いは羽虫。愛らしい程に小さい。自覚さえしてしまえば魔王ですらこんなものか。そんな狭量に、告げる。
「俺は征
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