暁という名
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いや、俺は縮緬問屋の旅の隠居…じゃなくてハルナスって村から旅に最近出たしがない旅人だよ」
と俺は答え、言葉を続けた。
「てか、何で俺を変態と思ったわけ?」
と聞くと、女性は
「だって、ニヤニヤしてたから……」と小さな声で話す。
「それは良いことがあったから顔が緩んでただけだぞ。ニヤニヤしているから全員変態と限らないんだぞ」
と自分でも何の話をしてるんだと思いながら言うと
女性はとっさに地面に土下座をした。
「すまない!あたしってば、つい早とちりしちゃって」
と謝る。だがこの場所で土下座されると視線が痛い。
「うわ、あいつ女に土下座させてるよ!」
「有り得ない!お前が土下座しろ!」
「人間の屑だ!!」
などと誤解を受け、酷い罵声を浴びる。
俺は猛スピードでこの場を離れ、お茶屋へ飛び込んだ。
「酷い目にあった…」俺が独り言を呟くと
目の前にはさっきの女性がいた。
俺は女性に文句を言おうとしたが、女性は
「さっきは本当にごめん。その良かったらここのお茶屋のお会計はあたしが出すから、許してくれないかな?」
と涙目で俺を見つめてきた。
俺は思った。(ズル過ぎだろ…、そんな顔をされて許さない男などいるわけがないぞ…)と心の中で呟く。
俺はクールぶって「ああ、それでチャラにしてやるよ」と話すと
女性はパァァと表情が明るくなり笑いながら話した。
「ありがと!あたしの名前は暁 渚!そうだ、名前教えてよ!」と俺を見つめる。
「俺は赤虎、ハルナス村生まれで育ちもハルナス村だ」
とあんまり自己紹介になってない自己紹介をした。
俺は脳内に暁という名前に聞き覚えがある気がしたが
気のせいだろうと考えを打ち消し
湯呑みになみなみと注がれたお茶を一気に飲み干した。
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