第二章 戦火の亡霊船
5話 西へ…(関門橋:源平編・上)
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言うものである。
「このまま何もなく鹿児島まで行けるかな?」
「ああ…そりゃ、無理だろうな。」
まだ辿り着くまでに結構な時間が残されているわけで、さすがに何も起こらずに終点まで行けるとは思えなかった。
そしてそんな予想は現実となるのである。
「楓くん…どうする?」
「ここまで来たんだし行くしか無いだろ…」
あれから一時間、ついに九州地方へ入ろうとする橋を前に捉えて僕らは立ち往生していた。
山口県と福岡県を結ぶ関門橋を挟んで左側、白色の旗を携えた木造の船が、そして右側には赤色の旗を携えた木造の船が、ところ狭しと水上に構えていたのだ。
そして橋の真ん中には鈍い色を放つ剣が浮いている。ここは壇ノ浦、そうすれば自然と思い起こされるのは源氏と平氏の戦いであろう。そして浮かぶ剣は三種の神器の一つ、草薙の剣…。
「なんでもありだな…。」
「一気に通り抜ければ大丈夫かな?」
「なんか動かないしそれでいいんじゃないか?」
「うん…わかった。」
そう言う香織の顔は笑顔で、やけに楽しそうであった。
僕は早めに多くの空気を支配下に置くことで不足の事態に対応できるようにする。そして車が動き出すと、予想に反して順調に進んでいく。
浮かぶ剣はどこか荘厳な雰囲気を放っており、近づくに連れて嫌な予感がしていたのだ。そしてその予感はあたってしまう。
剣とすれ違う直前、僕らの警戒がピークに達したその瞬間に巨大な光が放たれた。その源はすぐ右隣の剣であり、真横にいた僕らは視界が奪われてしまった。
「ブレーキ!」
「くぅっ…」
高まった反射神経を活かして、香織がすぐさま車の動きを止めたために怪我はなかった。しかし視界を奪われたために周りの様子が全くわからない。
「香織…離れるなよ。」
大量の空気を車の周りに巡回させて様子を探る。もし空間に空白を感じることがあればそこには何かがいると言うことなのだ。そして僕はあたりの様子を把握した。
「うっ…そだろ…。」
「なに!?なにがあったの?」
「囲まれてるよ!降りろ!」
少なくとも百を超える人影が確認できる。しかも一定の範囲外には、何かに遮られているかのように空気を送ることができなかったために閉じ込めれているのかもしれない。
ここまで香織は運転してきたために疲れが溜まっているだろう。ここは僕メインで立ちまわって行くべきだ。
車を降り、前後からゆっくり迫る人影に向けて面で覆い尽くす空気を放つ。小さなモンスターであれば少しの抵抗もなく吹き飛ばせる強さの物であったのだが、波のように押し寄せる集団には大きな効果は現れなかった。
先頭が後ろの人物に支えられて少しばかり進行が止まったのみ。それでもその僅かな時
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