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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十五話 浸透
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思う」
今度は唸り声を上げた。

「実際皇帝が居ないという不都合を除けばこちらも不利益を被っていない。反逆者になったわけでもない。この状態では貴族達も皇帝を廃立しようとは言い辛いだろう。つまり我々は皇帝奪還のために苦労する事になる。そういう面でも貴族連合軍は有利だ」
「なるほど、強かな計算をする」
その通りだ、貴族連合軍は反乱当初の予想とは違い強かに計算して動いている。その分だけ手強い。

食事が終り部屋に戻る途中だった、メックリンガー提督が私を自分の部屋に誘った。気になったのは私を誘う彼の目に迷いと怯えのようなものが見えた事だ。誘った事を何処かで後悔している、何処かで私に誘いを断って欲しいと思っている。それだけ悩みは大きい、そしておそらくは私にも関係が有る……。

部屋に入るとメックリンガー提督が大きく息をした。心の準備、そんな感じだ。「ケスラー提督、見て欲しい物が有る」
「見て欲しい物?」
「ああ、そこに座ってくれ」
そう言うとメックリンガー提督がリモコンでTV電話の電源を入れた。彼の示した場所に座る。メックリンガー提督も傍に座った。映像が流れ始めた。人質の五人、ヴァレンシュタイン提督、オフレッサー、リューネブルク、スクルドの艦橋か。一体何が……。



「如何思った?」
見終わって呆然としているとメックリンガー提督が覗き込むように身を乗り出して訊ねてきた。如何? 如何と言われても……。考える時間が欲しい。
「メックリンガー提督はこれを何処で入手したのだ?」

「フェルナー少将から渡された。あの三人は知らない」
あの三人? リヒテンラーデ公達の事か。つまり極秘に渡された。
「そしてローエングラム侯とオーベルシュタイン総参謀長には知られるなとも言われた」
「……そうは言ってもローエングラム侯に報せぬわけには……」
メックリンガー提督が“分かっている”と言って頷いた。

「私も報せる必要があると思った。そしてその度に考えてしまうのだ。ローエングラム侯はこれを受け止められるだろうかと……。夜には明日こそはと思い朝が来れば果たしてと考えてしまう。毎日それの繰り返しだ」
「……それで報せられなかったか」

メックリンガー提督が力無く頷いた。表情が苦い、おそらくは私も同様だろう。確かに報せたらどうなるか……。グリューネワルト伯爵夫人が大逆罪を犯した、それも自分達を守るために、……想像が付かない。彼が食事も摂れないほど悩む筈だ、私が同じ立場でも悩むだろう。

「これが捏造なら良いのだが……、ケスラー提督は如何思う?」
「いや、事実だろう。辻褄は合う」
「そうか、そうだろうな」
メックリンガー提督が溜息を吐いた。捏造であればどれほど楽か。

「この映像を見ると以前から貴族達はローエングラム侯を排除し
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