虫を叩いたら世界は救われるか検証してみた・波の章
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ない!!王!?高み!?勝者!?挙句に神域!?一体どこのだれがそれを認めるって!?お前が操る骸装鬼兵で自作自演の一人劇場だろ!満足したいんなら頭の中でやるんだなッ!」
覇道と呼ぶのもおこがましい。目の前の男はただ自分が受け入れられないのが気に入らなくて暴れる駄々っ子そのものだ、と冒険者は思った。その癖をして他人を受け入れることをしない。きっと他者を一人でも受け入れられたら、あいつはこんな馬鹿な事をやらなかったろうに。
冒険者は、憐れむような目で研究者を侮蔑した。
「――お前さぁ、トップに立つ器じゃねえよ。駄々をこねるだけならガキでも出来る。その先に一歩踏み出せなかったから、お前は捨てられたんじゃないのか?」
「き、貴様ぁ……!!貴様もそれを言うかぁぁぁぁッ!いいだろう、貴様から血祭りにあげてやるぅぅぅぁあああああああ!!」
エーテライトのエネルギーを自在に抽出できる科学者の狂気と、それをこの国から振り払おうとする冒険者の剣が真正面から衝突しようとしていた。
――そのエーテライト生成シリンダーの中に、運命の門が開く。
エーテルの数百倍の魔力伝導性を誇るエーテライトは、不純物が一欠片でも混ざると全ての素子が崩壊し、大気中に全て融け消える。それ程に脆く不安定な存在が生成されるシリンダーの中に――極小のホワイトホールが開いた。
そしてその中から現れたたった一匹の羽虫が、その男の覇道の全てを奪い去る。
変化は劇的。羽虫という不純物が混ざったことで、エーテライトは驚くほどにあっさりと素子崩壊を起こし、シリンダー内の結晶に罅が入る。そして、ぱりん、と小さな音を立てて弾けた。
「…………………………は?」
「え?」
二人が呆然と見つめる中で、その結晶は驚くほどにあっさりと崩れ去った。
急激な体積変化を起こしたエーテルは瞬く間にシリンダー内の密閉空間が耐えうる強度を越える勢いで膨張し、そして男が人生と心血の全てをつぎ込んた覇道と復讐のアンビショナル・リアライザーは、時空を揺るがすほどの大爆発を起こす。
薄く光るエーテル光の奔流に冒険者は包み込まれ――そこで冒険者の意識は一瞬途切れた。
やがて、床に倒れ伏していた冒険者は地面の感触に不快感を覚え、ゆっくりと体を起こした。
「あれ、俺……」
死を覚悟したにも拘らず、起き上がった時の冒険者の身体は怪我ひとつ追ってなかった。周囲を見回すと、骸装鬼兵が倒れ伏している。爆発によって禁呪の術式が崩壊し、全ての死者は肉の檻から解放されていた。
全ての悲劇の元凶である科学者は、装置の至近距離からの爆発に全身をズタズタに引き裂かれ、何が起こっているのか全く理解できないといった表情を浮かべながらこと切れた。
――最後まで、この男は何一つ理解することが無かったのか
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