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【短編集】現実だってファンタジー
虫を叩いたら世界は救われるか検証してみた・波の章
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ザー」という巨大な装置を愛おしそうに撫でながら、何の迷いもなく言い放った。

「私を捨てた両親が憎い。私に食事を作っていたのに助けなかったコックが憎い。執事が、庭師が、乳母が、使用人が、憲兵が憎い。私をけがらわしい手で触れ、けがらわしい食事を与えた第五階級の浮浪者が憎い。気安く話しかけてきた隣人が憎い。私に勉学を教えた教師が憎い。同期が……教授が……道往く下層階級者の全てがけがらわしく、醜い。我以外の全てが――思い通りにならない世界が憎い!!」
「なら……何故姫は生かして逃がした!血筋を継ぐ者を憐れんで敢えて逃がしたのではなかったのか!?」
「そんな低俗な作家が作った粗悪な三文芝居で我の心を推し量るなッ!!我がこれほどに苦しんでいるのに、そんなことも知らずにのうのうと生きながらえてきた下らない小娘に、殺す理由を欲しただけのことよ!ただ藁のように薙ぐのでは我が心は潤わない……全てを失い!穢れ堕落し!苦しんで苦しんで苦しみ抜いた果てに絶望する顔を晒し、我に懇願したときに初めて!!あの小娘に殺す価値が生まれる……!!そして名もなき冒険者よ、その絶望のトリガーはお前だッ!!」

既にアンビショナル・リアライザーは稼働しかけていた。地殻から大量に湧出する根源霊素エーテルを魔術で強制変換し、最高純度を誇るエーテライト結晶に生成し直すこのアンビショナル・リアライザーが発動すると、この装置は爆発的なエネルギーで禁呪を強制発動させる。

発動した禁呪の効果範囲はこの国家が全国に張り巡らせたインフラレート・パイプを媒介に首都より外の全てのインフラ設備を通してこの国に噴出し、禁呪は姿の見えない悪魔としてこの国の全ての人間の命へと死神の鎌を差し向ける。
禁呪が広範囲で発動すれば、発動範囲内にいたすべての人々が苦しみにもがきながら死に絶え、その骸は例外なく骸装鬼兵のような操り人形として死ねない牢獄に閉じ込められる。装置の発動範囲は――王国全てを包んでいた。

「くはははははは……!いいぞぉ、いいぞぉ!!この塵ひとつの不純物さえ許さないエーテライトが生み出す莫大な魔力が臨界に達した時、この国は我の国になる!!全てが我の思い通りになる永遠の理想郷へ!!魔力がある限り民も兵も老いることなく、他国への侵略を躊躇う事もなく!!我だけが至高の高みへ!究極の勝者へ!!世界の中心――神域へ至る!!!」
「何が神だ、何が究極の勝者だ!!馬鹿馬鹿し過ぎて笑えてくるぜ!てめぇは一生誰にも尊敬されることもなければ上に立つことも出来ねえよ!」
「凡俗め……!無知もここに極まれば喜劇だなぁ!尊敬などという言葉が出てきた時点で貴様は我が思想を一かけらも理解していない!」
「理解してもらうつもりもないくせにッ!!今の今まで本心を隠し続けて、他人の一人も受け入れず、認めることさえしようとし
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