裏切りの明け空
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より霞の自由さを止められるモノなど誰も居ない。
まったくあなたと言う人は……と呆れながらも、物見に向かっていた兵士は楽しそうであった。
「うっし、いっちょ気ぃ抜けたとこで……仕事といこか!」
応、と上がる声は歓喜に震えて。
呆れからか、信頼からか、詠もやれやれと首を振る。
「ホンット、あんたってば変わんないわね」
「ええやん。堅苦しいのは嫌やもん」
「まあ、いいけど」
「せやろせやろ? ほなバカ共、楽しい楽しい戦場やでぇ? ウチとお前ら、そんでもってえーりんが……」
「えーりん言うなっ!」
「おわっ! 水筒投げるとか危ないやん!」
「うっさい! バカ! ちょけてばっかいんじゃないわよ!」
いつまでも締まらないその様に、ドッと兵士達から笑いが起こる。
昔よりももっと優しい空間。ああ、自分達が守るべきモノは此処にあると、彼らは心を高められる。
「……ん、りょーかい」
満足げに、目を瞑った霞の雰囲気が変わる。
偃月刀が一振り、宙を裂いた。唸る音はそれまでの穏やかささえ切り捨てるような、そんな音。
徐々に、徐々に吊り上る口角。平穏を胸に仕舞い込んで、彼女は戦人へと変わって行く。
「ウチらはなんや?」
真横に振り切られた刃と同時、兵士達に問いかける。
『我ら、大陸を最も速く駆ける神速なり』
一糸乱れぬ返答は歓喜に満ち溢れ、自身達こそそう在らんと渇望を胸に。
「然り……そんで此処がウチらの生きる場所」
『応』
幾度幾重、彼女と共に戦場を駆けた。なんのことはない。此れもいつも通りの戦場だ。
「楽しい楽しい戦場で、世に示すんは命の輝き」
『応っ』
名を上げる為か……否であろう。彼らの名は彼女と共に、彼らの命も彼女と共に。彼女が居る場所こそ、今生きる全て。
――ウチには似合わんなぁ……けど、なんやこいつらもやりたそうやし、やってみるのもおもろいか。
口上など滅多に上げぬ霞であれど、“彼のせい”で自分も何か言いたくなった。
彼らにナニカを、与えてやりたくなった。確たるカタチとして口に出来るナニカを。だから霞は言葉を紡ぐ……自身が戦う、その意味を。
「くくっ……一身一命全てを賭けて、神速のままに乱世を駆けろ! 叫べや! 戦い続ける歓びを!」
――戦い続ける歓びをっ
ぐ……と胸が熱くなった。脳髄がギシリと甘く軋む。兵士達と一体になっていたと思っていたが、言葉を打ち立てるだけでこうまで違う。
ああ、こいつらは最高だ、と……霞の胸が高鳴った。
ただ、少しばかり気恥ずかしいと思った。
――もうちょい分かり易く言いたいもんやけどなぁ……ウチらが敵を絶望させられるくらいの……張遼が、神速が来たーって思わせるも
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