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乱世の確率事象改変
裏切りの明け空
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拓き、階にすらなりたいと願う。
 されども、胸が締め付けられる屈辱も心を埋めた。

――雛里が慕う男も、人じゃない。線引きを外れた今の雛里ですら、越えている。

 主と同じ高みに立てる程の異才。自分では届き得ない結果を読み取れる化け物。
 何故、と悔しさが心を焦がし、同じ高見に辿り着きたいと希う。自分は主の王佐なのだから、と。
 倫理どうこうでは無く、只々自分達が思い描くように乱世を治める為の効率を求める、人では無いモノ達。
 狡猾にして卑賤ならず、善悪の別なく飲み干して、二人が目指す先は遥か高み。
 しかし……桂花の思考はまだ足りないと、華琳は薄く笑って示した。

「ねぇ、桂花? 知っているかしら? もう一人、私達の描く答えに辿り着けたモノが居るんですって」

 声を聞いた瞬間、文字通り凍りついた。心も、身体も。
 誰がそんな事を思い浮かぶ? 考えても、自分達の軍には一人も見当たらない。なら外部かと思っても、この戦の細部まで知らないモノ達では有り得ない。
 たっぷりと時間を待ってから二の句が継がれ、桂花は心底、そのモノに対して純粋な恐怖を抱いた。

「ふふ……だからこそ、私の妹に相応しいのよ。月は、ね」

 黒を喰らいて何に至るか。
 華琳はまた前を向き、黎明の空に輝く朧三日月を見上げた。

――私と並び立ちたいのなら、あの子はきっと……覇王とは違う王になろうとするでしょう。黒の主に相応しい王に。
 人を外れたモノの主なら……そうね……

 自分ならこう呼ぶ、と一つの二つ名が思い浮かび、ふるふると首を振って口を開く。

「今はまだいい。まずはこの戦を終わらせる」
「……御意に」
「最前線は霞に任せていいわね。私達は張コウ隊の働きに合わせましょう。あなたの見解を聞かせて頂戴」
「は……張コウ隊の主な方針は徐晃隊に限りなく近く。それでいて張コウの下した命によって今回の戦では完全な死兵となり――――」

 乱世の大きな分岐点の前で、覇王とその王佐の二人は……自軍の勝利を疑わず思考を回す。
 官渡の戦いの天秤は、この時既に傾いていた。





 †




 烏巣の陣容は明の言の通りに四つに分けられていた。
 そのまま、情報の通り五つ目を探してから総攻撃に移っても良かったが、頭が四つの軍はソレをしない。
 曹操軍の兵数は袁家に比べて少ない。一部隊に当たり一万に満たない。それでも、彼女達は今回の戦での成長を生かして自分達の実力を示す方策を取った。
 万事に対応するならば、全ての部隊が別個として即応の型を取るべき。それが軍師達の判断。もし、郭図が明すら騙していたならば、その可能性も考えて。

 そして誰も率いるモノがいない部隊が……一つ。
 黄金の鎧を身に纏いて、幾多
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