第十話
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高校生くらいの年齢の男たちの姿がある。喧嘩・・・というよりは、リンチの現場であった。
「アイツ等・・・。」
葵は、その囲んでいる集団を知っている。最近この周囲を騒がしている不良集団だった。暴行やカツアゲなどで、何度も警察の世話になっている札付きである。彼らは、気の弱そうなあの男子を標的にしたのだろう。彼の掛けていたであろう眼鏡は砕け散り、周囲には、血も飛び散っている。
「ひっ・・・!」
その現場を見たなのはたちは、小さな悲鳴をあげた。まだ小学生の彼女たちには、社会が持つ闇の一端を見るには早すぎたのだ。戦いというものを経験したなのはでさえ、人の持つ悪意には震えを隠せない。・・・そして、悪いこととは重なるもので。
「お〜!可愛い子供たちがいるじゃん?」
その声を聞きつけた一人に見つかってしまったのだ。ニヤニヤと。獲物を見つけた悪魔たちは近づいてくる。もう、壊れた玩具には用はないとでも言うように、倒れた男子には見向きもしない。彼らは見つけてしまったのだ。もっと面白い玩具を。
「イケナイなー。こんな所まで入り込むなんて。」
「お兄さんたちが安全な所まで連れて行ってあげるよ。」
「ギャハハ!お前の悪人顔でこの子達怖がってるじゃ〜ん!」
なのはたちが、近づく悪意に怯えて後ずさる。それに合わせて前に出た葵は、深い溜息を吐いた。
彼らは、自分たちこそが強者だと信じ込んでいる。
だからこそ気がつかない。彼らを歯牙にもかけない程の人外が、ここにいるのだということに。
「なのはたちは下がってて。面倒だけど俺がやるから。」
だからこそ、彼の心にあるのは、面倒だという気持ちと・・・怒りだった。
「プッ!ナイトさんのお出ましだよ!」
「いーや。ただの人外だよ。」
ドゴ!葵が言い終わったその瞬間、集団の内の一人が悶絶する。そこには、拳を振り切った葵の姿があった。
「十五人か。まあ、すぐに終わるでしょ。」
本気で殴れば人体が破裂する。葵は十分に手加減して殴ったが、それでも成人男性以上の力は出ていただろう。殴られた男は、白目を向いて倒れたのだ。二歩下がってその男が倒れてくるのを避けて、葵は淡々と話す。
彼にとって、他人はどうでもいい存在だ。通り魔に殺された彼にとって、他人とは警戒の対象なのだ。記憶を取り戻してからは、人ごみの中でも常に意識の一部を使って周囲を警戒し続けているほど。
だからこそ、彼は、彼の内面に入り込んだ人たちを大事にする。彼の両親や、なのはたちを含んだクラスメート。行きつけの喫茶店の従業員など。彼らが傷つけられることを、彼は嫌っている。
だから、彼にとっては後ろのほうで倒れている男子などどうでもいい存在だ
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