第二章 戦火の亡霊船
4話 西へ…(名神高速:京都編)
[1/3]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
さて、昼を食べてから三時間半。車の時計が四時を指している中、僕らはもうすぐ京都に差し掛かろうとしている。
「今日はどこまで行くの?」
「そうだな…陽が落ちたら止まることにしようか。」
さすがにまだ夏なだけあって、それなりに日の入りが遅いために視界は保たれている。しかし、他に車がいないとは言っても、視界が悪い中を車のような速度で移動してはなれない僕らではモンスターを見逃すことになるかもしれない。
それ以前に、出発するときに感じていた余裕すら消えているほどなのだ。しっかり力をつけて旅だったつもりが、やはり環境が変わると感じる疲れも大きくなるのだろう。現にいま車を運転しているのは香織であった。
「ん?」
僕が弱い睡魔と戦っていると、しっかり前を見据えて運転している香織が小さく声を放った。
それに疑問を上げるのもだるく、何も言わずに横に向けていた顔をゆっくり前に向けると、僕を襲っていた睡魔はあっという間にいなくなってしまう。
「あれ…ここ京都だっけ…」
「そうだよ。だからあれは…」
僕の視界の中には真っ赤で巨大な鳥が飛んでいた。
京都、赤い鳥、そしてその赤い鳥が煌めく小さな火の粉をまき散らしながら飛んでいるとすれば、たどり着く答えは一つだろう。
「朱雀とか…?」
龍に続き幻想の生物、それも神として崇められる者との出会いである。
しかし先程と違うところが一つだけあった。それは相手方もこちらのことを発見しているということだ。
「なあ、香織…」
「うん。」
「向かってきてるよな。」
「うん。」
そう、真っ赤な火の粉を振りまいて、朱雀は僕らの乗る車めがけて突っ込んできたのだ。
攻撃を受けるわけにはいかない。香織はハンドルをおもいっきり切って朱雀の突進を回避、そして僕は進行方向を無理やり変えられた車が壁にぶつかるところを空気で衝撃を受け止める。
車の動きが止まった事を確認し、すぐに車外へと出た。この車を壊されるわけにはいかないのだ。僕と香織、二人が動かせる車を見つけるのにはかなりの時間を要したからである。車に性格でも生まれたかのように運転できない、合わない車があったのだ。
いま車を壊されれば再び無駄な時間を過ごすことになるだろう。よって僕らは車から離れた。
車に乗ったまま逃げるというのはありえない。明らかに相手の方が早かったのだ。僕らに戦う以外の道は残されていない。
「とにかく早いな…」
空を縦横無尽に飛び回る朱雀の速さはかなりのもので、舞い散る火の粉が夏の暑さと相まって僕らの体力を削る。
朱雀が高く舞い上がったかと思うと、今度は真上から僕らを潰しにかかってきた。その細い鳥足には炎が纏い、その威力は倍増されている。
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ