暁 〜小説投稿サイト〜
勝負師
3部分:第三章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後

第三章

「この試合。そしてうちは優勝だ」
「優勝の為にもですね」
「さっき言ったな。どんなことをしても勝つと」
「はい」
 それははっきり覚えている。あまりにも印象的な言葉だったから。
「それが今だ。それだけだ」
「それだけですか」
「安心しろ。これでうちの勝ちだ」
 キャッチャ^が立ったのを見てコーチに対して言う。
「これでな」
「時には勝負を避けるのも大事なんですね」
「勝負は何回でもある。さっき言ったな」
「ええ」
 またこの言葉が出る。コーチはそれにも頷く。
「それにな。その勝負の中にも何度も勝負があるんだ」
「今はその中の一つですか」
「その中でも天王山だ」
 また天王山という言葉を出してみせた。
「だからだ。ここでは負けるわけにはいかないんだ」
「それで敬遠ですか」
「打たれたら終わりだ」
 これが彼の心を大きく支配していることであった。
「それを避けて勝つ。今はそれだ」
「そうですか」
「俺は間違っているか?」
 ここまで話したうえでコーチに対して問うた。
「今の俺は。どうだ?」
「勝利を収めるということでは間違っていません」
「そうか」
 コーチの言葉に表情を変えずに頷いた。
「勝負師としてそれでいいと思います」
「いいのか」
「はい、勝つ為には」
 彼はそれでよしと監督に対して答えた。
「それもいいです。ですが」
「問題はあいつだな」
「ええ。納得するでしょうか」
「後でよく話す」
 彼は監督として己の矜持を見せた。
「それもまた俺の仕事だ」
「そうですね。全ては勝つ為です」
 その為には何でもする。それに従ったまでなのだ。それを説明するのもまた監督としての仕事である。そういうことであったのだ。
「それをわかってもらいましょう」
「この試合についても俺が話す」
 彼はこうもコーチに告げた。
「どうしてここで敬遠したのかもな」
「そうされますか」
「マスコミの相手だな」
「はい」
 この場合はそうなるのだ。それは言わずもがなであった。
「それもされますか」
「マスコミに話すのも監督の仕事だからな」
「監督も大変ですし」
「しかもただの監督じゃないからな」
 彼の言葉がさらに強くなる。
「勝負師だからな。それは当然だ」
「勝負師だからですか」
「勝負師は己の勝負の全てに答えないといけないんだ」
 それは彼の信念であった。監督というよりは勝負師のそれであったのだ。
「だからだ。今日もな」
「わかりました。それではそれも」
「これはな。優勝の後で話になる」
 彼はそれもわかっていたのである。
「よく覚えておけよ」
「後でマスコミにこぼれ話で後々まで伝えますよ」
 コーチはそれに応えて笑って告げた。
「この話は」
[8]前話 [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ