R.O.M -数字喰い虫- 2/4
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思い出を掘り返した。
『耐えられなくなったら、お財布のなかのメモを見るといいよ』
あの時、メリーという女の子は確かにそう言った。
耐えられなくなったら――彼女は、この未来を予見していたのだろうか。
あれが唯の悪戯だったならば、それで話は終わる。でも、もしも、あの女の子の言葉こそがこの状況を打破する事が出来るものなら。私を芋虫に追われ、極彩色に塗れる運命を変えてくれると言うのなら。
その一縷の望みを託して、私はあれからずっと開いてすらいなかった財布から、あの芋虫袋の中に手を突っ込んで、漸く『財布のなかのメモ』を発見した。あの時――メリーは財布を閉める瞬間に、それを滑り込ませたのだろう。余りの気持ち悪さにトイレで何度も嘔吐を繰り返しながらの発見だった。
今日、あの名刺らしいものに書かれた人は来るのだろうか。
ただそればかりを、私は唯一の希望として待ち続ける。
そして、その日――
「わたしメリーさん。貴方と久しぶりに会いに来たの」
その女の子は――天使のように神秘的なメリーは、私の部屋に現れた。
= =
「メリーの方はもう始まったみたいだな。だったら、俺も仕事をしますかね」
「え……?」
その言葉に、何の事だろうと首を傾げた春歌に――林太はあるものを突きつけた。
「このノート、見覚えあるかな?」
何の変哲もないA4のノート。中には数学の授業をメモしたと思しき情報が書き込まれ、恐らく学生の物であろうことが理解できる。そしてそのノートには、丸っこい文字で春歌という名前が刻まれていた。小さく息をのむ音が聞こえた。
「そ、それは……美咲に貸した、ノート……です」
何故それがそこに――と驚く春歌の表情の奥に、動揺だけでなくなにか後ろ暗さがあることを、林太は見逃さなかった。やはり、と内心で呟く。
「このノートの最後のページに、不思議な図形のようなものがあるんだ。君、知ってる?」
「………知り、ません」
言いよどみ目を逸らす態度から、それが嘘だと直感した。彼女はこれの最後にある『数学の繭』などと呼称されるものがノートに書いてあることをあらかじめ知っていたと見て良いだろう。
『数学の繭』は少しずつ、社会に拡散されている。ある日に突然道端で拾ったノートに書かれた『数学の繭』を見ると、『数字喰い虫』の幻影に囚われるという都市伝説に。それは刺激に飢えた人々が『数字喰い虫』という物語を受け入れ、そのうえで「本当かもしれない」と潜在的に信じることで、存在として世界に出現している。
林太は、ある理由からこの世界にある「科学で説明できない物」を追跡している。当然、都市伝説もよく調べていた。それ以外にも様々なことを調べているが、今日は追跡のため
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