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【短編集】現実だってファンタジー
R.O.M -数字喰い虫- 2/4
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感と警戒から来る緊張に包まれ、何をする気力も湧かなかった。先ほどの出来事を思い出して、激しい自己嫌悪に見舞われる。
 ――最悪だ。また美咲に当たってしまった。私のことを心配して毎日のようにやってきてくれるのに、こんな態度でしか返事を出せない。

 この部屋に籠ってどれほどの時間が経っただろう。
 数字を見るのが怖い。また、芋虫が湧き出てくるから。
 扉を開けるのが怖い。また、芋虫が這い寄ってくる気がするから。
 言葉を交わすのが怖い。あの虫の音が鼓膜にこびり付くのが嫌だから。

 そうして外部と接するのを断って、人としての生活まで断つように部屋に籠って毎日を送る。
 気が狂いそうなまでの芋虫への恐怖から、部屋の外を見る勇気もない。暑い日も、寒い日も、ずっとずっとここにいる。食事も水も全て親に渡してもらい、私が風呂に入れるように、部屋から風呂までの間に数のあるものは全てが排除されている。
 鏡を見る度にキューティクルを喪っていく髪。頬はこけ、隈はひどく、くぼんだ目元に光る眼球は充血していた。これが自分だと認めがたいほどに、みすぼらしい女だった。自分の存在が酷く惨めに映った。
 そしてやせ細っていく自分の身体を見てもなお、私はこの生活を止められない。

 夢を見るのだ。あの、芋虫に溺れる夢を。全身が芋虫に包まれ、餌のように弄ばれ、明確な終わりも存在せずにただ地獄を見続けるだけの夢を。夢を見るのが怖くて、最近はちゃんと眠ることすら出来ていない。それだけ追い詰められて尚、まだ夢を見る。

 次の夜を迎える恐怖を紛らわすように、がりがりと爪を噛む。
噛み過ぎて血が出て鋭い痛みが襲う事もあるが、それによって眠りが遠のくのならそれでいいとさえ思った。両手の爪はボロボロになって、肌もがさがさで荒れ放題になっている。

 この悪夢はいつまで続くのだろう。
 夢の中の芋虫は、段々と大きく、その存在感を増して迫ってくるような錯覚を覚える。

 いや、本当に錯覚なのだろうか?
 虫は、数字を喰らってぶくぶくと肥大化しているのではないか?大きく大きく成長して、私を食べられるまで成長し続ける気ではないのか?無限に増える芋虫が、いずれあの夢のように周囲の物質全てを芋虫に変えて、私は溺れて死ぬのではないか――?

 腹の底に氷塊が落ちたような恐怖が全身を揺るがし、金縛りのように体を縛り付ける。
 嫌だ、解放されたい、逃れられたい。そう必死に願うが、現実は何も変わらなかった。
 いいや、悪化した。体はさらに痩せ衰えていくし、もう両親さえ信用できない。
 いつかきっと捨てられて、何も出来なくなり、そして私はベッドの上で誰にも知られることなく――そうやって想像もしたくないのに目を逸らせない未来に打ちひしがれていた。そしてそのなかで、私は一つの
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