R.O.M -数字喰い虫- 2/4
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、見てください。時計です。数字が書いてあるからって部屋の外に投げ出されました。あんなにお気に入りだったのに………こっちは本です。バーコードの下にある数字と、本の中にあるページ数と文章の数字を恐れて全て破り捨ててしまいました。こっちは服……内側についてるタグに書いてある数字を怖がって捨てたものです」
指さす先には、綺麗に整頓された元美咲の私物が並べられている。普段はこの上に布をかけて外からは見えないようにしているらしい。その中にはフィギュア、カレンダー、財布、お菓子、化粧品、電子機器類、文房具、CD……etc……etc……アイテムの何所か一部分にでも数字が入る、ありとあらゆるものが放置されていた。
人の文明とはここまで数に溢れているのか、と感心するほどにあらゆる物がある。
同時に、ここまで物を捨てた人間がいったいどのような生活を送っているのか、想像もつかなかった。
「美咲のご両親は、いつかあの子が元に戻るのを祈って、手の届く範囲に置いてあるみたいです。数を口に出されるのも苦痛みたいで……もう決して外に出ようとしないまま半年が経ちました。学校も退学しました。そのうちにどこからか話が漏れて、みんなは面白半分に『数字喰い虫に憑りつかれた』なんて言い出して………おかしいですよね?美咲は本当に苦しんでいるんですよ?なのに、暇つぶしみたいに皆……!」
ぎりり、と掌が握りしめられた。そこから感じるのは強い悔恨と忍耐。
親友を面白半分にからかい、治る様子がないと見たらあっさりと離れて行った級友たちを、彼女は恨んでいるのかもしれない。――そしてそれは、同時にそれほどの状況でも美咲という少女を頑なに親友として想い続ける『異常とも言える』友情を感じさせた。
「病院の先生にも匙を投げられました。カウンセリングも続いてますけど、効果は全然ありません………もう、いつ自殺するかもわからない。そんな美咲が……昨日、私にこれを渡したんです。数字も書いてあるのに……自力で掴んで、渡したんです。この人を呼んで、って」
それはくしゃくしゃになった名刺だった。
都内のある会社の特殊な部署にいる、「稜尋林太」という社員の名刺だった。それが何を意味するのかは、春歌にはわからなかった。ただ、その人に会いたいと美咲が言ったのだ。何かあるに違いないと思った。
話を聞いた男性は、横にいる金髪の子供に言い聞かせるように何かを呟き、改めて春歌の方を見た。
「分かった。彼女と会わせてもらうよ。ただし、実際に彼女が呼んだのはメリーだけど」
それだけ言うと、男性は閉め切られた部屋を見やった。
= =
今日も終わらぬ悪夢の日々が続いているのか、と色のない天井を見上げた。
全身は消える事のない倦怠
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