R.O.M -数字喰い虫- 2/4
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ーツを取り込んでいく。この味、この触感。柔らかい生地の内側に封入された、更に柔らかいクリームと甘酸っぱいベリーの歯ごたえ。きっとそれは集合無意識の誰かが望んだ感情の片鱗なのだろうが、それはとても興味深い食物だった。
いまクレープを食べているのは、私がクレープ屋のクレープに興味を持ったからだ。
林太はその意思を汲んでクレープを購入し、2人で食べていた。
「はむ。むぐむぐ……んくっ」
クレープを完食すると、私は横の林太を見た。彼のクレープはまだ半分ほど残っている。
無意識的に掌を突き出すと、林太は苦笑しながら食べかけのクレープをその手に置いた。
私は何も言っていないが、こうなる因果を呼び寄せることをなんとなく知っていた。彼は文句の一つも言わずにそれに従ったが、なんとなく知っていたのだろうか。疑問の答えを導き出そうとは考えないが、少しずつ林太と私の『存在』が近づいている。漠然とそう感じたのだから、そうなのだろう。
林太は気付いているんだろうか。意識と無意識の境が、私と林太の間で融けはじめていることに。
そう思いながら、受け取ったクレープを口いっぱいに頬張った。
「よく食べるなぁ、メリー。やっぱりお前集合無意識とか関係なしに食事が好きになってるんじゃないのか?」
「変化には興味はないわ。ただ、食べ物を美味しいと感じられればいい」
「どことなく刹那的だな。そして口元がクリームだらけになってるぞ?ほれ、顔出して」
「ん……」
言われるがままに顔を晒すと、林太はハンカチでクリームに汚れた私の口元を拭った。他人から見れば、娘か妹の世話を焼いているように見えるだろう。
クリームを付着させずに食べることも恐らくできた。だけど、誰かのイメージによってそれは行われなかったのかもしれない。そこに興味は湧かない。
ただ、こうして林太と接していることを決して疎ましく思う事はないのは、少しだけ不思議だった。そして、不思議という意思があることが、また私の個としての存在を自覚させてゆく。
「……よし、綺麗になった。次からはもうちょっときれいに食べろよ?」
「集合無意識のご機嫌次第ね。貴方の意識が反映されてる今なら問題ないけど」
「そいつは重畳だ。あんまり子供のままでいられても困るし……」
「私の世話焼きは嫌いかしら、お兄ちゃん?」
「こんな時だけ甘えるなっちゅーの!」
そう言いながらもまんざらではなさそうな気がするが、確認する必要を感じないのでくすりと笑う。この笑顔も、自発的なものか望まれた物かは分からない。分からなくてもいい。
そして――私はこれといって意味はなく、クレープ屋で追い詰められたように震える制服の少女を見て、彼女に注目すべきだと思った。そこに論理的思考や明確なロジックは
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