R.O.M -数字喰い虫- 2/4
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見慣れた雑多な建築物。世界を見ているようで、隣すら見ていないどこか空虚な人々。雑然とした世界であると同時に、変化のない不思議な世界がこの町を動かしている。
流動的な物質と固定化される認識の世界。矛盾を孕んだままに膨れ上がったこの世界は、ひょっとしたらいつか弾けて泡沫の夢のように消えてしまうのかもしれない。
私はメリーさん。
私は林太と共に人間社会を歩んでいた。
いつからここにいて、何故メリーなのか。そんなことは知らない。
私が科学的にどういう存在で、これからどうなるのかも知らない。かつては何をすべきかも考える事は無かった。何故なら、私はメリーさんとしての"役割"を与えられた集合無意識の分岐でしかなかったから。私は都市伝説として語り継がれるメリーさんのほんの一面だけを切り取り、それに相応しい行動をなぞる。
行動を起こすのではない。結果的に、この世界にいるどこかの誰かが望んだ形を現象として出現させているだけ。だから集合無意識の望む興味しか私は抱かないし、抱いた興味は終わりを告げるまで連続した現象のように叶えられ続ける。
そんな私が変化を起こし、「自己」と呼べるかどうかも曖昧な意思の下に行動しなければならなくなったのは、林太が原因だった。
今になって思えば彼は、現象としてのメリーさんに殺され、運命を弄ばれる被害者への憐みや慈愛が作用した結果として私に逆転的な影響を与えたのかもしれない。都市伝説には助かる術を考え続ける人間がいる。集合無意識の発露で起きる、矛盾した事象の解決手段。それが、定型的なメリーから「私」を切り離し、なおもメリーを続行させること。
言うならば、私はありとあらゆる定型的メリーに囚われる事がなくなった存在。
それは、為すべき目的も追跡すべき相手も与えられない孤独に他ならなかった。
だから私は――なんとなく、林太と行動を共にした。
理由はない。
ただ、林太は独りぼっちだ。私と同じく、繋がるべき存在から離れて彷徨っていた。
ならば私も、彼と同じように彷徨っていていいのかもしれない。そう思った。
その無意識は果たして林太が私に望んだ物なのだろうか。それとも、私が林太に望んだ物なのだろうか。境はとても不明瞭で、曖昧で、胡乱で、でも私たちにとってはそれで良かった。
私という都市伝説のストーリーに終わりはない。
私の取る行動に明確性はない。ただ、彼と共に生活し、彼の隣でメリーさんとして振る舞うたび、私は私という意思のカタチを少しずつ感じるようになっていた。
それがどのような結果をもたらすかは、興味がない。
ただ、林太が買ってくれたクレープには興味が湧いた。
あまり大きくはない口に少しずつ生地に包まれたクリームやフル
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