第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十七日・夜:『剣理:殺人刀』
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ネル効果』で。
一度限りのトリック、二度は通じまい。敵も然る者、もう同時に槍を繰り出す事はないだろう。何より、もう一度など……次は脳への負荷が耐えきれない。
故に、コレで止めとする。故に、出し惜しみなど欠片もなく。真っ直ぐに、『敵』を睨み付けて。
「─────“晁陽月”!」
《───────…………》
天に駈け昇る朝陽の如き一刀、地に沈む朝月の如き二刀。一太刀目で“柳雪”を試みた十文字槍を断ち斬り、二太刀目で────真正面の槍騎士を、装甲ごと深々と。背骨に届くまで、袈裟懸けに叩き斬った。
《……どうやって見切った、どうやってこの装甲を破った?》
「テメェが目潰しに使った灰に残る、足跡から。そして、ショゴスの物理無効に長谷部の摂理無効。合わせりゃ、斬れない物は無いと踏んだ」
《道理と……当てずっぽうかい。いやはや》
頭上から降るような声に、返す。せめて、恥知らずの殺人機には過ぎないが……殺したのならば、末期の礼儀は尽くそうと。
吹き出した反り血が、全身を紅に染める。また一つ、命の灯火を潰した。また一つ、“殺人刀”の事実を背負う。
《く、ふふ……しかし、後世とは恐るべきものよ。まさか、貴様如き小僧めに……我が槍、潰えるとは》
「全くだ……俺程度に負ける程度の腕前が、免許とは」
《ほう……そう言えば、坊主。お前は》
「師、曰わく───」
問いに先んじて答える前に、長谷部を鞘に納めて。懐から、煙草を取り出す。銜え、火を灯し……肺腑で玩んだ紫煙を地下の饐えた大気に吐き捨てる。
思い出したくない事実を、ほろ苦い現実を思い出し、管を巻くかのように。
「『五年鍛えてみたが……お前、才能ねェわ。破門な』」
《────ふはっ!!? ハッハッハッハッハ! そうか、そうか! いや、やはり良い師に学んだようだのう……》
とびきりのジョークを聞いたかのように、快哉を唱えた槍騎士の装甲がひび割れ、砕け散る。
その残骸は、全て……ショゴスに貪られている。誓約の通りに。
「“少年老い易く学成り難し、一寸の光陰軽んずべからず。未だ覚めず池塘春草の夢、階前の梧葉已に秋声”」
どさりと、膝を突いた……見るも無惨に老いさらばえた老人と、地に落ちた“グラーキ黙示録”。嗄れた声で呟かれたのは、朱子の『偶成』の一節。
「長き道を来たが……お主のような若武者に負けたのならば、悔いはない……では、の」
「………………」
そのまま、灯火が消える。呆気なく、命が消えた。確かに悪人であり狂人ではあったが……命
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