第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十七日・夜:『剣理:殺人刀』
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《ふはっ、所詮は小童か……ここまで手を煩わせた事は、驚嘆に値するが。未熟、未熟未熟!》
覗穴の奥の七つの紫瞳が、憤怒から軽侮に。勝利を確信し、槍騎士は────
《武など、所詮はこの程度。奇跡など起こしはしない────そして、命を殺す事こそが武の本懐! 愚かなるかな、始祖胤栄! 柳生一門!》
「テメェ……」
対敵の流派のみならず、あろう事か自らの流派の始祖を嘲弄した。武人にあり得てはならない、敬愛すべき先達への冒涜を。
それに、嚆矢は見えもしない目を開く。鋭く睨み付けるように、槍騎士の居る方へと。
《奇蹟とは、こう言う事だ……さぁ、我が命、我が魂を捧げよう。喰らえ、喰らえ────“迷宮蜘蛛”!》
「ッ!?」
誓言と共に、槍騎士の生命力が昇華する。可視化する程に高純度な魔力が、空間を軋ませるかのよう。
刹那、視界が歪む。正確には、認識が捻れた。ショゴスの視界に、蜃気楼の如き『揺らぎ』が生まれ────槍騎士の姿が、十体に増えた。
《ハッハッハッハッハァ! どうだ、これが“迷宮蜘蛛”の能力! 人体に置ける迷宮、脳髄の認識を操る能力……即ち、『思考の迷宮を造り出す権能』だ!》
「ッ……巫山戯やがって!」
正に、切り札だ。どれが本物かまるで解らない。そもそも、見えているモノが誠か否かすら怪しい。
何にせよ、この槍襖の中の本物を避ける事は叶わないし……また、二本の刀で全てを受ける事も不可能である。
《無駄無駄無駄ァ! この権能は、相手の認識を現実として貴様に反映する! お前が思い描く事は、全てお前に対してのみ事実となるのだ! この十の槍襖は貴様に十の傷を負わすが、私には私を斬った場合しか傷は与えられない!》
「チッ────糞チートが!!」
つまり、守りを崩されたのだ。
では、どうするか。どうすれば、この危地を乗り切れるか。思考を────回転させる。敵の権能に冒された、役立たずの自分自身を。
《さぁ、そろそろ時間だな……愚かな貴様の! 惨めな死の、時間だ!》
虚空から、嘲笑が聞こえる。六次元の彼方より、此方を嘲笑う刃金の螻蛄が。
背後の影は、ただ此方を見詰めている。期待するでもなく、侮蔑するでもなく。ただただ、三つの燃えるような視線を背中に感じるだけ。
《これぞ、宝蔵院流奥義────“十箇”!》
そして、射程に踏み
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