第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十七日・夜:『剣理:殺人刀』
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起動する。
《────“黄衣の王”!》
青白い、狂笑を象った仮面。三つの瞳のそれを纏い、燃えるような白金の瞳が────煌めいて。
………………
…………
……
屍毒にまみれた十文字槍が、獲物を貫く────前に、虚空に浮かぶ玉虫色の祭具『賢人バルザイの偃月刀』よりの防呪印に阻まれた。
しかし、ただ阻まれた訳ではない。第一防呪印『竜頭の印』から第二防呪印『キシュの印』、最強の防御力を誇る第三防呪印『ヴーアの印』までを貫かれて漸く止まった程の突きだった。
『てけり・り! てけり・り!』
(分かってる。必ず、“迷宮蜘蛛”を喰わしてやるさ)
ショゴスからの念話に応えながら偃月刀を掴んで構え直せば、念話の応用でショゴスの視界が手に入る。これで、視力の問題はクリアした。
体勢の崩れた槍騎士に向け、左の偃月刀は前方に水平で、右の長谷部は後方に低く地を擦るような下段八相に構える二刀流。
「裏柳生新影流兵法─────“水月刀”」
《ヌゥッ……!》
槍騎士が構える。どうやら、もうどのような技かはバレているようだ。有名流派の弊害である。
そして、それは敵の流派にも言える。今恐るべき宝蔵院の槍は、只一つ。
(“悪心影”)
《……なんじゃ?》
先程の決裂から、一度も口を開いていなかった“悪心影”に思念を送る。それに返った、不貞腐れたような思念。別段、気にする事もなく。
(『物理的な剛性に加えて魔術的な耐性、治癒能力』……コレを破りゃあ、野郎も斬れるンだな?)
《……是非もあるまい。それを破れば、邪神だろうが聖人だろうが魔人だろうが────この世のモノである限り、滅せぬものの在るべきか》
(そうか。ならば、良し)
嗤う。嚆矢は、悪辣に嗤う。漸く、槍騎士を討ち倒しうる光明を得て睨み合う。偃月刀の刀身に浮き上がっては沈んでいく、血涙を流す無数のショゴスの瞳と……槍騎士の七つの紫瞳が。
《………………》
「………………」
呼吸すら最低限に。互いに────迎撃姿勢。即ち、膠着状態。
この時点で、嚆矢の目論見は外された。相手の刺突を左で受け、右の擦り上げで敵を断つ“水月刀”は不発に終わる。
じり、と歩を進める槍騎士。突きではなく、薙ぎ払いの距離まで。単発ではなく、そもそも連続攻撃である“惣追風”を受ければ……最早、勝機はない。
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