第七章
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第七章
そしてそのうえでだ。屈託のない顔でこう言うのだった。
「もう少しでな」
「風に流されて第六軍の方に行ってたか」
「その包囲されている連中のところにな」
「もっと運が悪かったらイワンのど真ん中だ」
他ならぬだ。敵のところだというのだ。
「そこに落ちてたらな。もうな」
「そこで殺されてるか」
「若しくはシベリアだな」
どちらにしてもだ。碌でもない結末が待っていたというのである。東部戦線はそうした戦場だった。そこにあるのは。極限まで人間性を無視した戦争なのだ。
それがわかっているのはだ。そこで戦っている他ならぬ彼等だ。その彼等が話すのだった。
「まあそれで逃げる軍のところに着地できてか」
「助かった」
「本当に運がいいな」
「全くだよ」
このことをまた言う二人だった。そしてだ。
アルヒマンはだ。こうその彼等に言った。
「それでな」
「ああ、それで?」
「どうしたんだ、今度は」
「言い遅れたけれどな」
こう前置きしてだ。それからの言葉だった。
「有り難うな」
「ああ、いいさ」
「それはな」
二人はだ。そのことは笑顔でいいとした。そしてだ。
そのうえでだ。二人でまた話すのだった。
「御互い様だよ」
「気にするな」
「気にするなっていうのか」
アルヒマンはハイデッケンとホルバインのその言葉にだ。意外といった顔になった。そしてそのうえでだ。二人に対して言うのだった。
「いいのか、それで」
「戦友だろ?」
「だったらな」
「それでいいんだよ」
「気にするな」
またこう言う二人だった。
「俺達は好きでやったんだしな」
「だからいいんだよ」
「そうか。じゃあ俺もな」
二人の心がわかってだ。アルヒマンもだった。
引き締まった顔になってだ。そのうえで彼等に言った。
「その時はそうさせてもらうな」
「ああ、そうしてくれ」
「その時はな」
二人もだ。彼に対して笑顔で応える。そしてだ。
今度はだ。三人で、であった。
それぞれ強い顔になってだ。そのうえで言い合った。
「じゃあ今度はな」
「そうだな。その第六軍な」
「絶対に助け出すか」
包囲されている。その彼等をだというのだ。
「正直洒落になってないしな」
「完全に包囲されてるからな」
「補給も殆どないしな」
僅かに空輸があるだけだ。だがそれもかなり苦しい状況なのだ。
第六軍は包囲されているだけでなく飢餓と疫病にも苦しめられている。そうした意味でもだ。最早一刻もならない状況なのだ。
その彼等についてだ。三人は話すのだった。
「今度はあの連中の為に」
「俺達は戦うか」
「俺もだな」
三人で言い合う。
「政治的に色々あるみたいだけれどな」
「俺達は友軍の為に」
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