第5部
紅桜編
第66話 初めて使うキャラは大概扱いに苦労する
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依頼の内容、それはこの鍛冶屋から盗まれた一本の刀の捜索、及び回収であった。その刀の名は【紅桜】と言い、先代刀鍛冶であり今は亡き村田兄妹の父村田仁鉄が生涯を掛けて作った稀代の名刀と呼ばれる刀だそうだ。
その名の通り刀身は淡い紅色をしており、月夜に照らせば更に一層その紅色が際立つ事からこの名がつけられたと言うそうだ。
それだけ聞けば相当の値打ちがあると推測される。盗人が目をつけるのも無理はないだろう。
だが、この刀はどうやら曰く付きだったようだ。
その紅桜を完成させて間も無くして、父である仁鉄はこの世を去り、それ以降、紅桜に関わった者は使った者も含めて尽く死亡していると言うそうだ。
今ではすっかりそれを使う者も居なくなり、巷では呪われた妖刀とまで言われる程の不評っぷりだそうだ。これでは此処の刀鍛冶が寂れるのも無理はない。
妖刀を生み出した刀鍛冶の刀なぞ気味悪がって誰も持ちたがらないだろう。
「でねぇ!! その紅桜ってのが淡い紅色を帯びていましてねぇ!!!」
「もう良いっつってんだろ! もうあんたの言いたい事は全部地の文に説明してもらったから! また一から説明すんのとか確実にページの無駄遣いだから!」
「そりゃもう月夜に照らせばより一層際立つ事からこの名がつけられたんですよ!!!」
「駄目だこりゃ。こいつ耳でも悪いのか? 人の話聞きゃしねぇ」
すっかり兄の無神経っぷりに参ってしまった銀時。そんな銀時を横目で見た鉄子がゆっくりとこちらの方を向き静かに口を開いた。
「兄者に話を聞いて欲しいんだったらそんな風に言ったって駄目だ」
「へ?」
「兄者に話を聞いて欲しいんだったら、兄者の耳元で大声で叫ばないと兄者は気づいてくれんぞ」
「あっそ……それじゃ―――」
面倒だが仕方ない。銀時は立ち上がり鉄矢の耳元へと近づく。そして大きく息を吸い―――
「お兄さぁぁぁぁぁん!!! あのですねぇぇぇぇぇ!!!」
「うるせぇぇぇぇ!!!!!!!」
確かに聞こえたようだ。そして見事なまでのカウンターの様な右フックが銀時の顔面に直撃した。
その痛みを痛感しながら、銀時は今回の依頼を受けた事をちょっぴり後悔していた。
***
お昼時の江戸町内は人で賑わっている。それは新八とエリザベスの居る橋の上でも同じ事であった。
特にこの時間帯は大勢の人が慌ただしく行き来しているのが見える。
皆道を急いでいるのだろう。だが、そんな流れの中で二人はその場に立ち尽くしていた。
「それじゃ、此処で例の血まみれの巾着袋を見つけたって言うの?」
新八の問にエリザベスは『来た時にはこれだけが置かれていた』と板を掲げて意志を伝えた。
新八は未だに信じられなかった。
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