第5部
紅桜編
第66話 初めて使うキャラは大概扱いに苦労する
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ると言うのであればかなり不味い。
こちらはまだ刀を鞘に納めているのだから。
「そんなに構えなくても大丈夫さ。俺ぁあんたのファンみたいなもんでねぇ。別に幕府の犬でもなんでもないさ」
「ほぉ、俺のファンか……だが、それにしては貴様からは血の匂いがするぞ。それに、犬は犬でも狂った犬ならば保健所へ連れて行かねばな」
くくく、背後で男の笑い声が聞こえてくる。相変わらず神経を逆なでされるような不快な笑い声だった。わざとそうしているのか? それとも元からそう言う話し方なのか?
詮索は後回しにしよう。この男は間違いなく俺を切りに来ている。何時までも余裕を見せていては危うい。
「巷で辻斬りが横行しているようだが、貴様がその下手人か?」
「だとしたら、どうする? 俺を斬るかい?」
「誰彼噛みつくのも結構だが、噛みつく相手を考えた方が良いぞ。見境なく噛みつくのは早死にする事になる」
言葉を交わしつつ、桂はゆっくりと振り返った。振り返り男の全貌を見入る。自分と同じように傘を被り、薄汚れた着物一式に足袋と草鞋、其処だけならさほど気になるところはなかった。
だが、その男が携えている獲物を目にした途端、桂の思考が一瞬停止してしまった。
「いやねぇ、俺も確かに血に飢えてるんですがねぇ、俺以上にこいつが血に飢えてるんですよ。強い奴の血が吸いたいってねぇ」
「その刀……貴様、それを一体何処で!?」
錯乱状態だった桂に冷静な判断などできなかった。正に一瞬の出来事であった。
一瞬の内に男の姿が目の前から消え、代わりに背後に男の気配を感じた。
「あらら、こら拍子抜けだわ」
さもがっかりしたような口調を残し、抜いた刀身を鞘に収めきったのとほぼ同時に、桂の背中がパックリと切り裂かれ、鮮血が辺りに飛び散った。
辻斬り相手に不覚を取った事、それ以上に桂の脳内を支配していたのはあの獲物の事であった。
何故あれが奴の手にある。あれは、あの刀は―――
それを最後に、桂の意識は深い闇の底へと沈んで行った。
***
時刻は既に昼辺り、世間では慌ただしく往来を行き来する人で賑わっていた。静かな夜とは打って変わり活気に溢れた時間である。
だが、そんな江戸の町内とは全く別世界の様な現状が、此処万事屋銀ちゃんの中で起きていた。
「・・・・・・」
銀時は終始対応に困り果てていた。久しぶりの客なので本来なら金づるが来たと喜ぶべき場合なのであろうが、今回やってきたのはとても客と呼べる相手ではなかったのだ。
全身白いペンギンの様な着ぐるみをし、真ん丸でつぶらな瞳とくちばしを連想させるぶっとい口。それだけ特徴を並べれば理解出来たと思うが、今こうして銀時の目の前に居るのは紛れ
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