想起幕 黒の少女が願う世界
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も。
優しいあなたには残酷だけど、あなたはあなたとして、秋兄として乱世を遣り切って。
その為には、記憶を失っていても、あの言葉を繋ぐべき。
あなたの心に、私の想いの華を、預けよう。
「クク……忘れてたまるか……お前のこと。俺も絶対に忘れてやんねぇよ、夕」
「う、ん……」
ごめんね、秋兄。あなたは誰とも違って、本当にひとりぼっちなのに。
私はもう手伝えない。
私が一番手伝えるはずだったのに……一人にしてしまう。
「……乱世に、華を……世に……平穏を」
必死で堪えている震える声は、思いやりと悲哀に彩られ、優しい響きを伴って心に暖かさを広げてくれた。
――ありがとう。
ズブリ、と肉を貫かれる感触が胸に一つ。痛みはもう、感じなかった。
満足だ。あなたを信じる。あなた達を信じてる。だからどうか、幸せになって。
私が繰り返した絶望を味わわないで欲しいから……願いを一つ、最期に紡ごう。
彼の為に。彼女の為に。
大好きな人達の為に。この世界で生きる人達の為に。
「どうか……あなたの望む世界に、なりますように」
一つだけ、後悔があった。
有り得ないはずの確率のカタチ。そんな幸せな事象があったなら……
“もしも”
“彼が一番初めに私と明に出会っていたのなら”
“あなたは私達を救って、幸せにしてくれましたか?”
きっとこのどうしようもなく優しい人は助けてくれる。
絶対そうに違いない。
麗羽達とも笑い合って、明や私を輪に入れて、そうして世界を変えてくれるんだろう。
白、白、白が思考を埋め尽くしていく。
最後に浮かんだのは……そんな“もしも”の幸せな世界だった。
みんなで笑い合って、幸せをつかみ取る、そんな未来だった。
――明、秋兄……大好き……
†
一面が白の世界で少女が一人、大きなため息を吐き出した。
「第一適性者田豊もこれで消失……張コウの運命を捻じ曲げて、一つだけ救われましたか。あなたのおかげで……この外史を変えられます」
モニターに映るのは、赤髪の少女が縋り付いて泣き叫ぶ姿。救いたくとも救えなかった絶望の世界。
「始まりの恋姫外史では、“張コウ”は確かに存在していました。御使いに関わることなく、曹操の部下として」
光る物体が二つ、空間に浮かび上がる。一つは鳥の頸、一つは綺麗に巻かれた琵琶の弦。
「それがどうです……捻じ曲げられた事によって表舞台から消されてしまった」
わなわなと震えだす手で受け取って、歪んだ空間の裂け目に投げて仕舞い込む。
「二喬はまだ、分かり
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