想起幕 黒の少女が願う世界
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ない彼女の笑顔。
まだ死んでいないのに死んでしまう彼女の笑顔。
大切な大切な彼女の……自分が大好きな笑顔。
――あ……
自分は、何度も、何度も抗ってきた。
――ああ……
絶望しかない世界の終焉を迎える度に、救いを求めて抗った。
――どうして……
死ぬしかない彼女を救いたくて救いたくて、誰を生贄に捧げても抗った。
――どうして……忘れてたの……
誰か助けてくださいと、自分は最後に願って諦めた。
――私が救いたかった一人は……
世界は残酷に過ぎた。
自分が救いたいと願った想いさえ捻じ曲げて
自分が彼女を救えないように……自分にとっての大切をも入れ替えられていた。
――明だけだったのに……
世界に踊らされた道化は私一人。
抗う事を諦めた私には、もはや救いの道は無い。
――私が救いたかったのは、明だけだったのに……
ああそうか、と遅れて気付く。
この事象で暮らしていた、世界の道化にされていた私が好きになったあの人は……私と同じだった。
居なかった存在で、居なかった名前。
一度目か、何度目かは分からない。私と同じように救いたい子が居て、抗っているから矛盾していた。
最果てまでたどり着ける可能性のあるモノ。
彼女と共に戦える、足りないこの世界に必要な存在。
――なら……諦めた私は彼に託そう。
“あの名”を名乗る彼ならば……彼女と共に乱世を越えられる。
張コウである明を、徐晃である秋兄が救い出せる。
“あの敵”すら、“あの戦い”で乱世を終わらせれば封じ込められるだろう。
例え其処で終わらせられなくても、秋兄と明なら世界を変えられる。
明の本当の姿は秋兄と同じで、想いを繋ぐ優しい子。なら、私がするべき事は……
ごめんね、秋兄。あなたに背負わせる事になった。
でもこの子を救える方法は、もうこれしかないから……受けてくれてありがとう。
明……ずっと守ってくれてありがとう。だから私は、ちゃんと気持ちを伝えよう。
「あなたに出会えて、私は幸せだった」
「……」
ピタリと、明の呟きが止まった。
「あなたに出会えて、私は楽しかった」
もう力も入らない震える腕をどうにか上げて、さらりと赤い髪を一つ撫でる。
緩いウェーブに顔を埋める度に、いつも幸せに満たされた。甘い匂いをもう一度感じたかったな。
「あなたに出会えたから、私は“生きる”事が出来る」
そのまま滑らせた掌を、そっと彼女の頬に添える。
愛しい温もりは変わらずに、いつでも私の心に安息をくれる。
「だから、思い出を、無くさないで。嘘にしないで。あ
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